学びの内容
岩政 伸治 教授

イワマサ シンジ

岩政 伸治 教授(学科長)

専門分野

アメリカ文学・文化 エコクリティシズム

自己紹介・学生へのメッセージ

■自己紹介
「変わるのは世の中じゃない。俺たちだ。」

アメリカのオバマ元大統領は"change"を訴えて人々の心を掴みましたが、皆さんはこの"change"という言葉を聞いてどのように感じましたか。上の引用にあるように、オバマが訴えた"change"は世の中が変化するのではなく、私たちが変わるんだ、世界を変えるんだ!というポジティブなメッセージだと私は思います。実は冒頭で引用したメッセージは、オバマの発言ではなく、「人を不当に刑務所に入れる政府のもとでは、正しい人間にふさわしい場所も刑務所だ」と訴えて、米国の奴隷制とメキシコへの戦争を批判し、自ら牢獄に入った19世紀アメリカの思想家ヘンリー・デヴィッド・ソローのエッセイからの引用です。この言葉は今なお英語圏の人々を中心によく引用されています。またソローが黒人の奴隷解放を訴えた人物であることを考えると、オバマが掲げるチェンジにはこのソローのメッセージが影響しているのかもしれません。
ソローが示したポジティブなメッセージは後に「戦争と平和」を書いたトルストイや非暴力・不服従を唱えたインド建国の父ガンジー、公民権運動の黒人指導者キング牧師、ベトナム戦争反対を訴えたカウンター・カルチャーの若者たちに大きな影響を与えました。私の研究は、このヘンリー・デヴィッド・ソローを中心に、彼の世界市民思想や環境思想が影響を与えたアメリカの文化、文学を課題とし、合わせてスキルだけでなく、コンテンツから学ぶ英語教育にも取り組んでいます。(詳細はこちらをご覧下さい。)
90年代の環境保護活動への関心の高まりとともに、ソローの自然観が再評価されたことは記憶に新しいところです。21世紀に入り、2001年9月11日以降、世界をめぐる情勢は大きく変わりました。この問題を考えるために、インターネット上ではソローや彼の影響を受けた人々の考えが盛んに引用されていて、彼の反戦思想や全体よりもまず個人を重んじる姿勢、環境を中心とした持続可能な社会という発想が再び評価されつつあることを実感しています。ソローの言葉には、オバマのメッセージ同様に、未来への希望が込められていると思います。アメリカの文化・文学や英語についてはもちろん、勉強以外のことでも気軽に相談に来て下さい。研究室は英研の前です。

■一問一答(『リリア』より抜粋)
Q. 白百合の印象は?
A. 春の新緑の美しさ、夏の蝉時雨、そして秋の紅葉と豊かな自然に胸を打たれました。学生の皆さんも真面目で人なつっこく、授業が楽しい毎日です。

Q. 大学時代に心に残っていることは?
A. ロックバンドを組んでいて、NHKのFIGHTという若者向けの番組で紹介されたことです。

Q. 英語力を高める秘訣は?
私は比較文化学科という留学生と帰国子女が中心の学科で英語で大学教育を受けました。自分は帰国組ではなかったために苦しみましたが、好きなものを見つけてそれを英語でがむしゃらに勉強することで何とか克服できました。ハリー・ポッターが好きならインターネットで情報を集めたりイギリスに出かけて舞台となっている場所を探すとか、ビートルズが好きだったら歌を覚えて、伝記やレビューを英語で読みあさるとか、英語で何か好きなものに夢中になれるとしたらしめたものです。
担当科目
■文学部 英語英文学科
入門セミナー ・アメリカ
メディアで学ぶビジネス英語B
アメリカ史
インテンシヴ・リーディングⅡ
アメリカ文学史Ⅱ

担当科目の内容
■文学部 英語英文学科
◇インテンシヴ・リーディングⅡ◇
英語の文章を読みこなすためには、大意を効率的に捉えながらまとまった文を読みこなすアプローチに加えて、ギアをローギアに入れて、スピードを落とし、言葉の響きや成り立ち、その周りの景色に目を配りながら英文を味読するアプローチが必要です。この授業では後者に力を入れ、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンが著した名作、The Sense of Wonderをテキストに、英英辞典を駆使して、原文の持つ息づかいにまで迫ります。
業績
■著書
  • Mushroom Clouds: Ecocritical Approaches to Militarization and the Environment in East Asia (Routledge, forthcoming, 共編、共著)
  • 『環境人文学の地平』(弘学社 2017年 共著)
  • 『ソロー語録』(文遊社 2009 翻訳 「天声人語」で紹介)
  • 『平和をつくった世界の20人』(岩波書店 2009年 共訳 読売新聞で尾木先生が紹介)
  • 『9・11とアメリカ』(鳳書房 2008年 共著)
  • 『レイチェル・カーソン』(ミネルヴァ書房 2007年 共著)
  • Different Voices(金星堂 2004年 共著)
  • 『英和アメリカ史学習基本用語辞典』(アルク、2001年 共著)
  • 『英語で言うとこうなります』(竹書房 2000年 共著)
  • 『会社の英語』(『アエラ』特集号、朝日新聞 2002年7月 英語翻訳ソフトについての記事を執筆)
  • The Sense of Wonder (郁文堂 1998年 共編)
詳細は個人のホームページへ→

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■主な論文
  • 「9・11後の新しいパラダイムを求めて-テリー・テンペスト・ウィリアムスの9・11受容」
  • (『白百合女子大学言語・文学研究論集』第6号 2006/3)
  • 「ソローと賢治の「時間」の意識」『ヘンリー・ソロー研究論集』(日本ソロー学会、2004/4)
  • 「都会の自然をめぐる考察- What is "Urban Nature"?」『文学と環境』(ASLE-Japan/文学・環境学会、2002/9)
  • "Solitude" Speaks the Nature of Walden (富士短期大学学術研究会編『富士論叢』第45巻1号 2000/05/03)
  • 「「孤独」の構造分析と帰納法の実践」 (湘南工科大学紀要 2000/03/25)
  • 「Snyderにみる宮沢賢治の修辞学」 (桐朋学園大学研究紀要第25集 1999/11/20)
経歴
■経歴
上智大学比較文化学部卒
上智大学大学院博士課程単位取得満期退学
東京外国語大学、玉川大学、獨協大学、千葉大学、東邦大学、桐朋学園大学、富士短期大学、湘南工科大学での非常勤講師を経て現職。
スタンフォード大学visiting scholar(2011-2012, 2019-2020)
インターネットラジオでP.ミルワード氏の英語トーク解説。
まんが雑誌に「かしましハウスでイングリッシュ!!」(共訳)を連載。(2000-2010)
 
■所属学会
ASLE-Japan
日本アメリカ文学会
日本ソロー学会 等
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