学びの内容

キベ ノリオ

木部 則雄 教授(大学院 発達心理学専攻主任)

専門分野

精神分析(こどものこころの探求・クライン学派・英国対象関係論を中心とした精神分析)・精神医学

自己紹介・学生へのメッセージ

精神分析は、フロイトの死後に米国を中心とした自我心理学と英国を中心としたクライン学派のふたつに分かれました。ただし、このどちらにも属さない、例えばウイニコット等の独立派という学派もあります。
こどもの分析は、アンナ・フロイト(自我心理学)とメラニー・クラインの論争の基になったように、かなり異なった治療上のアプローチが選択されています。自我心理学では、こどもは保護されるべき存在と考えられ、親の養育機能を重視しています。クライン学派では、こどもの心的発達はフロイトの理論よりもはるかに早期に完成され、フロイトの自由連想法を変更することなく、こどもを一人の個人として治療(プレイセラピー)を行えると考えています。
私はクライン学派の理論と技法に基づいて、こどもの心的世界に直接アプローチする臨床の実践を行っています。フロイトは、タブー視されていた無意識に潜む性欲等の衝動を神経症の基盤と考え、世間の非難を浴びました。クラインもこどもの世界が、純粋無垢な世界だけでなく、攻撃性と怒涛の渦の世界も存在していることを認識したのでした。これは、従来のこども観を否定することであり、多くの人々や分析家からも非難されました。しかし、クラインの卓越した臨床に基づいた理論の正当性は、英国を中心にして支持され、自我心理学と対抗する一大勢力になっています。
私はこのクライン派の理論を中心に、臨床と臨床研究を行っています。臨床コースの大学院では、通年の面接の講義を担当し、実際のケースを通して、精神分析の概念と実践の掛け橋をしています。また、併設の発達臨床センターでの実習は、同席での面接や個人のセッションを通してのスーパーヴィジョンを行っています。臨床心理は、修士の2年間だけでは十分に学ぶことができないでしょうが、その後の実践の基礎となるように心がけています。修士論文の指導は、テーマが臨床に関するものであれば、お受けしていますが、これは各人の意思と努力の基盤があってのことです。
業績
■著書
『こどもの精神分析』(2006)岩崎学術出版社
『こどもの精神分析II』(2012)岩崎学術出版社

■監訳
『こどものこころのアセスメント』(2007)岩崎学術出版社
『母子関係の精神力動』(2013)岩崎学術出版社
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