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授業情報/Course information

科目一覧へ戻る 2021/10/30 現在

科目名/Course title フランス文学研究D/French Literature (D) (Research)
担当教員(所属)/Instructor 伊藤 敬佑 (人間総合学部児童文化学科)
授業科目区分/Category フランス語フランス文学科専門科目 
授業形態/Type of class 講義
開講期/Semester 2021年度/Academic Year  通年/ONE-YEAR
開講曜限/Class period 火/TUE 2
対象所属/Eligible Faculty
対象学年/Eligible grade 3年 , 4年
単位数/Credits 4
副題
/SubTitle
前期:フランス絵本史概説
後期:子どものためのconteを読む
授業のねらいと達成目標
/Course Objectives
【授業の前提】
フランス児童文学は、日本ではあまり読まれておらず、良く知られている作品も多くない。結果フランス児童文学は、十分な数の作品を読んでいない人から、あまり豊かでない分野であると、あるいは、『星の王子さま』のような児童文学に分類して良いのかどうか悩ましい作品がフランス児童文学の主流であると、誤解と思い込みを含んで語られることも少なくないのが現状である。
よって、本授業の履修者としても、フランス児童文学をほぼ読んだことがないか、あるいは読んだとしてもフランスの作品だと明確に認識はしておらず、「フランス児童文学」と言われてもあまり具体的なイメージのわかない(あるいはごく限られた作品しか思い浮かばない)学生を想定している。

【前期のねらい】
 この授業では、体系的に語られることの少ないフランスの絵本を対象に、その発展の歴史と、現状を提示する。その過程で、作品とその背景を知ることで、フランス社会や文化の変化と現状についても、理解し、検討する機会を提供する。

【後期のねらい】
 この授業では、フランス(児童)文学の中の1ジャンルであるconteを対象に、基本的に時系列に沿って重要作品を提示し、読み進めて行く。まずは作品を丁寧に読みつつ物語を読む楽しみを味わい、その上で背景などを分析することで、より深い理解を目指す。

【達成目標】(履修者が受講後に「よりできる」ようになると想定していること)
 (1)フランスの絵本(と児童文学)の歴史と現状についての知識を身につける。
 (2)フランスのconteの代表作品と変遷についての知識を身につける。
 (3)具体的に作品を読み解きつつ、フランス社会と文化への理解を深める。
 (4)作品の内容を端的にまとめつつ、自分の考えを述べる力を身につける。
この授業は、ディブロマ・ポリシーの「専攻する言語と文学、文化に関して、専門的な知見と技能を身につけている」に対応しています。

授業概要
/Course description
【前期】
 授業形式は、PDFファイル(授業レジュメと、作品のコピー)と解説音声ファイルを配信する、【文書教材・課題配信型授業】で行う。配信には、主にGoogle classroom(登録方法は別途指示する)を使用する。教材のうち、先行して配信する授業プリントは、穴埋め形式のため、可能ならば印刷をしてもらいたい。その他のファイルは、基本的に講義時間に配信し、指示された順に聞きながら、あるいは読みながら、準備されたこちらの質問に学生が答える/学生からの質問に応じることで、双方向型の授業としたい。(なお、同時間に受講ができなかった学生も、手順通りに行うことで授業を追うことができるようにする。)
 授業内容としては、フランスにおける絵本および子ども向けのバンドデシネの歴史を概説する。具体的には、その前史から、19世紀末のジャンルの成立、1930年ごろ、1960年ごろの2つの転換期を経て現在にいたるまでの流れを、必要に応じで同時期の児童文学作品を紹介しつつ、時系列に沿って示していく。とりわけ、学期の後半では、古典的な絵本のイメージを打ち壊す「現代絵本」を中心に扱い、文と絵の関係に注意しながら作品を具体的に読み解くことで、「絵本」に対するより幅広い知見と視野の獲得を目指す。また、「子どもを対象に書かれた作品」の分析を通じ、「子ども」というファクターからフランス社会や文化を読み解き、理解を深める。
 各回では、それぞれの時期における重要作品を取り上げ、その作品・作家の概説と、時代背景や周辺作品の紹介を行うとともに、講師が準備した作品(の一部)を授業時間内に読む時間を取る。毎回の出席は、毎授業後に行う内容確認の質問と授業へのコメントの提出によってカウントする。

【後期】(後期の授業は対面で行う予定です)
 各回の授業では、基本的に1つのconteに焦点を当て、まずその作品の邦訳を読み、内容をまとめる。
 次に、講師から作品の内容や背景、あるいは周辺の作品についてポイントを解説する。(可能ならば前週にフランス語を配り希望者は目を通した上で、訳と対比しつつ原作のフランス語のポイントを説明する。)
それらを踏まえ、受講者は作品に対する自分の考えをまとめ、提出をする、という手順で行う。
授業計画(授業の形式、スケジュール等)
/Class schedule
第1回:イントロダクション
第2回:絵本の誕生:前史からブーテ・ド・モンヴェルたちまで
第3回:バンドデシネの誕生:ロドルフ・テプフェールからタンタン以前まで
第4回:1930年代の転換(1):「タンタンの冒険」
第5回:1930年代の転換(2):「ぞうのババール」
第6回:1930年代の転換(3):「ペール・カストール絵本」
第7回:1960年代の転換(1):2人の編集者ロベール・デルピールとフランソワ・リュイ=ヴィダル
第8回:1960年代の転換(2):トミー・ウンゲラー
第9回:1960年代の転換(3):エコール・デ・ロワジール社(「バーバパパ」など)
第10回:「現代絵本」の旗手(1):クリスティアン・ブリュエルの初期作品
第11回:「現代絵本」の旗手(2):クリスティアン・ブリュエルの後期作品
第12回:「現代絵本」の特徴(1):絵と文の新たな関係
第13回:「現代絵本」の特徴(2):絵本と現実の新たな関係
第14回:「現代絵本」の特徴(3):テーマの広がり
第15回:まとめ

第16回:後期のイントロダクション
第17回:ペロー童話(1):「サンドリヨン」
第18回:ペロー童話(2):「赤ずきん」
第19回:オーノワ夫人と妖精物語
第20回:ボーモン夫人「美女と野獣」 
第21回:ボーモン夫人のその他の作品
第22回:セギュール夫人『新妖精物語』
第23回:アルフォンス・ドーデ『月曜物語』
第24回:アンドレ・リシュタンベルジェ『かわいいトロット』
第25回:レオポルド・ショボー「年をとったワニの話」
第26回:マルセル・エメ『おにごっこ物語』
第27回:ピエール・グリパリ『木曜日はあそびの日』
第28回:サンぺ、ゴシニ『プチ・ニコラ』
第29回:現代のconte
第30回:まとめ
準備学習・履修上の注意
/Notices
【履修上の注意】
授業のねらいと達成目標で書いたように、履修者に対し、フランス絵本・児童文学の事前知識は求めない。フランス語能力については、文の構造がわかれば辞書を引いて、意味を理解出来る程度のレベルを求める。また、講義をただ聞くだけにならないよう、自分で実際に作品を読んでみるという姿勢を強く求める。学期の後で構わないので、気になった作品はぜひ読んでもらいたい。

【前期の求められる準備】
授業前にアップロードされる授業プリントを、可能ならば印刷して授業に臨んでください。(家にプリンターがない人は、送られたPDFファイルをコンビニでプリントすることができます。印刷は必須ではありませんが、印刷をしない場合は詳しくノートを取るなど、各自工夫してください。)

【後期の求められる準備】
 可能な場合、翌週に扱う作品のフランス語を渡すので、全部でなくとも目を通し、どういった作品なのか考えておいてください。
教科書・参考書等
/Textbooks
【教科書/Text books】
プリント配布。

【参考書/Reference books】
末松氷海子.『フランス児童文学への招待』.西村書店, 1997年.
私市保彦.『フランスの子どもの本』.白水社, 2001年.
石澤小枝子編著.『フランスの子ども絵本史』.大阪大学出版会, 2009年.
成績評価の方法
/Evaluation
【前期の評価方法/Evaluation】
①授業への参加度・貢献度(45%)、②フランスの絵本作品(あるいは児童文学作品)を読んでのコメント2回(20%)、③期末レポートあるいは絵本の翻訳(35%)

【前期の評価基準】
①授業への参加度・貢献度:(1)授業内容に関する質問に答えられているか、(2)各授業最後のコメントに自分の考えをかけているか
②作品へのコメント:(1)作品の書誌情報、(2)作品の内容のまとめ(特に絵本の場合は文だけでなく絵の観察が重要)、(3)作品について考えたこと
③レポート: (1)適切な構成、(2)議論の妥当性、(3)レポートを書く際のルールに則っているか、の3点を中心に評価を行う。

【後期の評価方法/Evaluation】
①授業への参加度・貢献度(60%)、②期末レポートあるいは翻訳(40%)
【後期の評価基準】
①授業への参加度・貢献度:(1)その回に取り上げる作品の内容のまとめ、(2)作品について考えたこと、の2点を提出してもらい、評価を行う。
②レポート:同上
備考
/Notes
【討議(ディスカッション、ディベート)を取り入れている】
【グループワークを取り入れている】
【発表(プレゼンテーション)を取り入れている】
【フィールドワーク、実習、実験、実技を取り入れている】
本授業は、前期については遠隔授業(オンデマンド型)として実施する。
本授業は、後期については対面授業として実施する。

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