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堀井清之 (教授)
大切なことは、ありふれたことに疑問を投げかけること。私の研究テーマである「スパイラル」もまさにそこからスタートしています。
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(聞き手)(以下略)先生の研究室にお邪魔するのは、今回が初めてなのですが、入口にもご研究テーマである「スパイラル・フロー」に関係するいろいろな図形や写真がありましたよね。実はインターネット検索を利用して先生のお名前を検索すると、この「スパイラル・フロー」とか「可視化」「暗黙知」などといった聞きなれない言葉がたくさん出てきます。研究そのものが非常に高度な工学的知識を要するものですので、すべてを理解することは到底不可能かと思うのですが、一体どのような研究なのでしょうか。
(堀井先生)(以下略)
わかりました。そうですねぇ。ごく簡単な例からご紹介しましょう。「スパイラル」とは「螺旋(らせん)」「渦(うず)」状であることを指します。私たちの身近なところに、この「スパイラル」を持っているものが実はたくさんあります。頭のつむじ、指紋はもちろん、われわれの身体を形づくるタンパク質の構造そのものが「螺旋状」であり「渦状」なんです。では、これらはただ気まぐれに渦を巻いているのでしょうか。どう思われます? やっぱり気まぐれじゃないかって(苦笑)。いやいや、実は渦を巻かなければならない必然性が、そこには存在するのです。話が長くなってしまいそうですから詳しいことはまたの機会にしておきますが、私の研究はその「スパイラル」の持つ意味を考え、その力について探っていくものと考えてもらえればわかりやすいのではないでしょうか。
「可視化」についてもキーワードとなりそうですので、教えていただきたいのですが。
「可視化」とは、目に見えないものを見えるようにすることを言います。担当している「コンピュータ文学研究」という授業では、文学作品を一定の方法で分析することで、その文体構造の可視化を実際に試みています。例えば、夏目漱石の『草枕』を三次元のベクトル上に「主観」「客観」「その他」という座標軸を設け、コンピュータ分析を行うと、螺旋(スパイラル)を描きながら物語が進行していることが手に取るようにわかります。
このように文学作品の文体構造を目に見える形で明らかにすることで、より深い理解とそれにともなう新しい発見を得ることができるのです。
なるほど、先生のご研究テーマである「スパイラル」と「文学」が意外な形でつながってきているわけですね。興味深い学際的研究です。
白百合ではそのほかにも「総合コースC(世界的な視野から見た日本の姿)」「食文化と化学」といった授業を担当しています。「総合コースC」は、世界的視野から本当の日本の姿を理解し、社会人、国際人としての素養を見につけることを目的とするものです。この授業では、学外から社会の第一線で活躍している方々を実際にお招きすることで、さまざまな切り口から今日の日本とその将来について考えるユニークな取り組みを実践しています。
また、「食文化と化学」では化学的視点から食欲のメカニズムや脳内ホルモンの働きといったことについて考えてみたり、身近な化学現象に触れてもらう機会を持ってもらおうと、七宝焼きや彫金実験など実体験をともなった授業を心がけています。いつもいつも「スパイラル」ばっかりというわけでもないんですよ(笑)。
理系科目の授業は文系の女子学生には、なかなか履修しにくいと思うのですが、なぜか先生の授業は人気があるので、いつも不思議に思っていました。でも、今日のお話でその理由がわかったような気がします。つまり、身近な事柄をきっかけとして、学生の好奇心を引き出していくその授業の展開手法に秘訣があったわけですね。
いやいや、秘訣というほどのものでもないですよ(再び笑)。白百合の学生はみなさん、物事の本質を理解する潜在的な力を持っています。つまり、さまざまな文学作品に触れる中で、人間の多様な生きざま、考え方を知ることで、人間としての深みを増すことができる、そんな風土・環境が白百合にはあるのだと思います。人間としての深みとは、いわゆる人としての「格」であると私は考えていますが、共通科目をはじめ、宗教学科目、外国語科目、各学科・専攻の専門科目での学びの成果が、卒業生の「人格」「品格」そのものに見事に集約されているのではないでしょうか。それは「資格」とは違って、履歴書に書き記すことはできません。でも、決して試験に合格したからといって取得できるようなものでもありませんよね。われわれ教員もそういう伝統ある風土・環境を大切にしていきたいと思っています。
どうもありがとうございました。
(聞き手 / 「アンシャンテ」編集部 2003年4月28日 研究室にて)



