児童文化学科 児童文学・文化専攻
舟崎克彦 (准教授)
水曜・午後の研究室はいつもオープンスペース。だから学生もふらりと訪れては、私の著作に気が済むまで目を通していきます。
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(聞き手)(以下略)先生は児童文学作家・挿絵画家として数え切れない程の作品を世に送り出されているのですが、1979年〜1982年にかけてNHK教育で放送された『おかあさんといっしょ「ブンブンたいむ」』のキャラクター「ブンブン」「ごじゃえもん」「つねきち」の生みの親でもありますよね。
(舟崎先生)(以下略)
そうです。よくご存知ですね。
リアルタイムで番組を見た世代ですので、感無量です。「つねきち」は意地悪なやつですが、実は寂しがりやで何とも憎めないキャラクターでした。そのほか、あの「ぽっぺん先生」シリーズも先生の作品ということで、子どもだけでなく大人も楽しめる児童文学として多くのファンに愛されていますよね。確か主人公の「ぽっぺん先生」は独活(うど)大学で生物学を教える教授という設定でしたが...。
私とは大分イメージが違うでしょ。読者だった学生に「ウッソー!!」といわれています(笑)。「ぽっぺん先生」をはじめて書いた頃には、まさか自分が大学の教壇に立つようになるとは思いも寄らなかったですよ。白百合では児童文学の入門的な授業のほか、創作を主体とする授業を担当しています。
数々の作品を生みだしてきたクリエイティブなお仕事と大学で教鞭をとるというお仕事は一見相容れない部分があるように思えるのですが、実際のところはいかがですか。
そんなこともありません。私たちの人生は常に「創造」することを求められています。学生もまた同じです。勉学・就職・恋愛すべて自分自身の創造性で切り開いていかなければなりません。ですから私の授業では何らかの形でこの「創造する力」を養う作業を盛り込むことにしています。プロとして児童文学作家や絵本作家となるのは容易なことではありませんが、結果として別の道を歩むことを選択したとしても、そういった環境の中で培われた「独創性」は必ず生きてくると思います。「絵本研究」という授業の中では、学生とともに私自身も新たな創作を学生の作業展開に合わせて同時に進行させます。実際に創作過程をガラス張りにすることで、理論としてではない本作りのあり方を教えています。
なるほど「発想する力」とそれを「表現する力」、これを併せたところの「創造する力」をじっくり養うというわけですね。
ただ、児童文学というものには幅がありますから、まずさまざまなジャンルの作品に触れ、その器の大きさを知ってもらった上で、自分に合ったものを選択してもらう基礎作業は避けて通れません。人には得意なものと不得意なものがありますからね。例えば、創作は得意ではないのだけれど、作品の分析・評論の着眼点は素晴らしいなんていうことはよくあります。授業の中でさまざまな方法による文章表現を求める理由もそこにあります。その作業を通して自分自身が「創ること」に向いていないということに気がつく学生もいますよ(笑)。でも、彼女には別の文学的アプローチがあるわけです。
「ハリーポッター」や「千と千尋の神隠し」「ロード・オブ・ザ・リング」などファンタジー作品がここ数年脚光を浴びていますが、これについてはどう思われますか。
ファンタジーを現代社会からの逃避傾向の顕れだとする意見がありますが、私の考えは違いますね。もっとポジティブな意味合いを持っていると思います。それはむしろ「現状批判」と呼べるものに近いのではないでしょうか。最近の若い世代は漫画やゲームなどを通して豊かなイマジュネーションを潜在的に培っていると思います。白百合にもそういった素晴らしいものを持っている学生がたくさんいます。一方で、若者はいつの時代でも数多くの悩みを抱えているものです。そして学生は、作品の中に登場するキャラクターに悩める自分を投影して、自己を客観化させていきます。それは見失いかけたアイデンティティを取り戻す無意識の作業のように私には思えます。21世紀初頭の日本に訪れたファンタジーへの関心の高まりも実は見失いかけている何かを取り戻す作業なのではないでしょうか。
最後に児童文学に興味をもっている、あるいは白百合で児童文学・文化を勉強してみたいと思っている方にアドバイスやメッセージをお願いしたいのですが。
表現することを大切にしてください。それは日記を書くことからでも構いません。思っていることを文字で表現することが自己確認の第一歩です。さまざまな表現様式を一つひとつ丁寧にこなすことで自分自身に新しい可能性が湧き起こってくることが実感できると思います。白百合で児童文学・文化を学び、独自のスタイルで表現する方法を見出すことができればベストですね。みなさんとお会いできることを楽しみにしています。
ありがとうございました。
(聞き手/「アンシャンテ」編集部 2003年3月4日 研究室にて)



