教員紹介

 

髙橋 博史 教授

専門分野 日本近代文学。芥川龍之介を始めとして、大正・昭和に発表された小説を中心に、それぞれの作品に即しながら小説のダイナミズムを説き明かそうと試みています。
担当科目 国語国文学基礎演習 I (近代)
近代文学講義
国語国文特講
国語科教育法1
国語科教育法2
卒業論文
担当科目の内容 ◇国語国文学基礎演習 I (近代)◇
近代の小説や詩を読んだり、鑑賞したりしたことはあっても、それを〈研究〉するというのはどういうことなのか、小説や詩を研究して何が分かるのか、いぶかしく思う人も多いと思います。この授業では、小説を中心に、研究するとはどういうことをし、どのようなことが得られるのかを、基本的なところから実践していきます。
 まず最初に志賀直哉「或る朝」を読んで、感想を出し合います。その上で、自分の体験になぞらえて分かるだけでなく、作品自体を分かるためにはどうすればよいかについて考えていきます。
続いて井伏鱒二「屋根の上のサワン」、宮沢賢治「土神と狐」、志賀直哉「清兵衛と瓢箪」、泉鏡花「外科室」、森鴎外「高瀬舟」、芥川龍之介「羅生門」について、学生が発表した後、みんなで討論しながら、作品の語り方に注目すること、作中の事物が時代の中で持つ意味を調べることなど、作品について議論する上で必要な事柄を学んでいきます。一つの作品に3回の授業をあてます。小説を読むこととはひと味違った、小説を研究する面白さを体験することを目指しています。

■小説を楽しもう
「小説」ということばは、今日ではやや堅苦しい、時にはいかめしい響きすら感じさせますが、小説は本来楽しむためのものです。特別な目的がなくてもマンガを読んで楽しむように、小説もまず読んで面白いこと、楽しむことが第一です。ただマンガでもそうですが、一口に面白い、楽しいといっても面白さの程度は様々です。読み終わって「うん、ちょっと面白かったな」と感じる程度の作品もありますし、読んでいる途中から作品に引き込まれて「うーん、面白い」とうなってしまうような作品もあります。

ところでうなるような面白さ、深い楽しみを与えてくれる作品を読むと、そのことについて誰かに話したくなります。しかし自分の感動をうまくことばにすることは、なかなか難しい。例えばとても心に残るマンガを読んで、それを誰かに話そうとしたとします。さいわい相手もその作品を知っており、しかも気に入っていたという場合には、いっときその話題で話が盛り上がるでしょう。でもただ「よかったね」「感動ものだね」というだけでは、自分の思いを言い当てているとは思えません。まして相手がその作品のことを知らなかった場合は、お手上げです。
ストーリーを説明し、印象的な場面を紹介し等々――様々なことを語ってみても、その作品の良さをうまく伝えることはできません。最後に出てくるのは「とにかく面白いから、一度読んでみて」ということばです。つまり説明することを諦めてしまうわけです。マンガにしろ小説にしろ、優れた作品は私たちの心を揺さぶるのだけれども、その感動を言葉にするのはとても難しい。

小説についてよく主題だとか、作者の意図ということが語られます。この小説の主題はこれこれであり、作者はこういう意図でこの小説を書いたと説明されると、一応なるほどと思います。しかしピンときません。何かが違います。私にとってこの作品の魅力は、主題や意図で代表させるには、もっと全体的で、もっと捉えどころがないものなのです。全体的で不得要領な作品の魅力を何とかことばで表現すること。小説を研究することの第一の課題はここにあると私は考えていますが、それは同時に、自分が受けた楽しさ、感銘をより深く味わうことでもあります。

一人で作品を読み楽しむだけなら、なにも大学の授業で小説を採り上げる必要はないでしょう。自分が受けた楽しさを相手に語り、同時に相手が受けた印象に耳を傾ける。作品をめぐって対話を交わすことで、より深く多面的に小説を楽しむことが出来るような、そういう授業でありたいと思っています。

自由記述欄 ■自己紹介
生まれは長野県です。もっともごく小さい頃に長野を離れたのですが、いまだに山が好きで休日には東京近郊の山を歩いています。見晴らしの利かない樹林帯を上り詰めて、ぱっと視界が開けたときの爽快感は、作品をあれこれと悩みながら考えているうちに、ふとこういうことだったのかと得心させられるときの喜びに似ているようでもあります。


著書

●著書
『芥川文学の達成と模索』、1997年5月、至文堂
●近年の主な論文
高校・中学などで教材とされている作品についての論文を掲げます。
「読むこと・教えること――中島敦『山月記』に即して」(『日本文学』、2003年8月)
「『現代日本の開化』を読む」(『〈新しい作品論〉へ、〈新しい教材論〉へ 評論編1』、2003年2月、右文書院)
「文学作品における論理――芥川龍之介「杜子春」に即して」(『「文系知」と「理系知」の融合』、2002年3月、近代文芸社)
「一塁手の生還――忌避される外界」(『文学の力×教材の力 中学校編3』、2001年6月、教育出版)
「『屋根の上のサワン』を読む」(『月刊国語教育』、2000年9月号)
「羅生門」(『国文学 解釈と鑑賞』、1999年11月
「葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』」(『〈新しい作品論〉へ、〈新しい教材論〉へ 3』、1996年6月、右文書院)


経歴

■経歴
1950年長野県に生まれる。東京大学文学部卒業。同大学院博士課程退学。学習院女子短期大学、大東文化大学を経て、1996年より白百合女子大学に勤務。

■所属学会
日本近代文学会
昭和文学会
社会文学会
全国大学国語国文学会
現代文学会

 
 
資料請求
お問い合せ