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研究室訪問

六鹿 豊 (教授)
フランス語フランス文学科 
六鹿 豊 (教授)
白百合生が持っている「他者へのやさしさ」と「しっかりとした価値観」。そんな個性をこれからも温かく見守っていきたいと思います。

PROFILE
1950年生まれ。パリ第7大学大学院言語研究科博士課程修了(言語学第3課程博士)。著書は『フランス語学の諸問題』(共著)、『白水社・ラルース仏和辞典』(共同監修)など。日本フランス語文学会、日本フランス語フランス文学会に所属し、2002年度前期NHKラジオ「フランス語講座・入門編」の担当講師としての活躍は耳に新しい(2003年度後期放送分として現在オンエア中)。主な研究テーマはフランス語文法、フランス語学。

担当科目
「フランス語ⅠD」「フランス語ⅡA」「フランス語Ⅲ」
「フランス語文法」「卒業論文」「フランス語学演習E」


( 聞き手)(以下略)先生のご専門は、「フランス語文法」「フランス語学」と伺っていますが、具体的にはどのようなことを研究テーマとされているのですか。


研究室にて

(先生)(以下略)
語の意味と用法、辞書記述、動詞と時制の関係、名詞と冠詞の関係などです。たとえば、「私が行く」と「私は行く」にあらわれるような「が」と「は」、あるいは温度が低いことをあらわす「冷たい」と「寒い」、私たちはこれらの語や表現を場面によって使い分けています。でも、その使い分けの基準はどういう仕組みになっているのか。このような問題を、フランス語のさまざまな語や表現について考えています。


フランス語を勉強しようと思ったきっかけは何だったのですか。


語学はもともと好きだったのですが、大学では、新しいことに取り組みたいという気持ちがあり、フランス語学科に入学しました。会話中心でフランス語に入っていった経緯もあり、文法上の煩わしさをあまり感じることなく勉強できたのがよかったのでしょう。語学が苦手というひとのほとんどは文法でつまずいていますから、そういう意味では導入部ってとても大事ですよね。ただ、私が大学に入った頃は、大学紛争真っ盛りの時代で、学生のストライキで授業が長期間中止になりました。学業以外でも、高校時代の経験をもとに、ハンドボール部を立ち上げたまではよかったのですが、やっぱりキャンパスがそんな状態だけに、いつの間にか雲散霧消になってしまいました。だから正直、大学であまり勉強した記憶はありませんし、必ずしも順風満帆の大学生活だったとは言えませんね(苦笑)。大学で勉強できない分はラジオ講座などで穴埋めしていましたが、まさかその時には、自分がラジオ講座の担当をすることになるとは夢にも思いませんでしたよ(再び笑)。


そのラジオ講座についてですが、先生が、NHK第二ラジオの「フランス語講座・入門編」の講師を担当されていたのは、2002年の4月〜9月だったと記憶しています。幸い、2003年10月〜3月の後期分として現在同ラジオで再びオンエア中でもあるのですが、収録当時の苦労話、特に注意した点などがあればぜひ聞かせていただきたいのですが…。


フランス語ラジオ講座

まず、講座は基本的に日本人講師1人と外国人1人で成り立っています。これはフランス語に限らず、ほとんどのNHKの語学講座に共通していることです。私のときは、本学助教授の佐藤クリスチーヌ先生がパートナーを務めてくれましたから気心が通じていてとてもやり易かったですね。「基礎英語」などのラジオ講座を聞いていた受験生も多いと思いますから、イメージできると思いますが、各課はそれぞれ学ぶべき文法事項のテーマがあって、その文法構造を含んだ会話形式の文章が左ページに、使用文法の解説が右ページに来るんです。解説ページは文法事項の説明だけに工夫にも限界がありますから、左の会話部分をいかに楽しく読ませるかが講師の腕の見せどころになります。とにかくシチュエーションが大切であり、具体的に場面をイメージさせることが重要であることは、自分自身がラジオ講座を聞いていて痛感していたことですから、その作りには微に入り細に入りこだわりました。


ラジオの収録となると、いろいろと失敗談もあったりすると思います。今となってはもう時効ですから、裏話をちょっとだけでもお願いできれば…。


そうですね。収録そのものは生放送ではないですから、録り直しが効く分、期待しているような大失敗はなかったですよ。ただ、集音マイクの感度はとても優れているので、収録中にお腹が鳴ってしまうと、その音をしっかり拾ってしまうんですね。「では今日のポイントです。『グゥ〜』」ではさまになりませんから、『グゥ〜』の部分はカットするわけですが、ついつい鳴ってしまった音を隠そうと、言葉を被せるといった小細工を弄してしまいます。でも言葉が被ってしまうとカットするわけにもいかず、泣く泣く録り直しになるんです。自業自得ですよね(笑)。ところが、収録慣れしてくると、意識していなくてもお腹が鳴らなくなりましたから、人間の身体って本当に不思議なものです。それから、私は出身が京都なので、会話の端々に京都弁特有のイントネーションが残っています。いまお話していても感じるでしょう? ラジオは全国放送ですから、いわゆる「共通語」のイントネーションで会話を進めていく方が無難なのですが、ちょっと油断すると、京都弁のイントネーションが混じってしまうんです。スタッフから「すいませんが…」と声が挙がらなくとも、言葉を発した瞬間に自分自身で「しまった!」と動揺が走るので、会話に妙な間があいてしまい、あえなく録り直しなんていうこともありましたかね。こう見えて結構気が小さいんです(笑)。


先生が白百合で教鞭をとられるようになってから、だいぶ月日も経ちました。長年、白百合生を見てきて、変わったところ、変わらないところ、いろいろあるかと思いますが、いかがですか。


白百合のもみじ

キャンパスそのものの環境はあまり変わっていませんね。もちろんパソコンが増えたり、教室の設備が驚くほど整備されましたが、緑豊かなキャンパス風景は着任当時のままです。そこに集う学生も、着ている服装が時代とともに変化しているだけで、白百合生の多くが持っている「他者へのやさしさ」や「自分のペースを守る」といった性格は今も昔も変わりありません。それは一般に言われている「おっとりしている」という表現よりも「地に足がついている」という表現のほうが適切かもしれません。時代に流されることなく、しっかりとした価値観を持っているからこそ、急がず慌てず、自分の人生を見つめていけるのでしょう。地位や名声・職種に固執せず、さまざまな分野で卒業生が活躍しているのもそういったことと無縁ではないかもしれません。


どうもありがとうございました。


(聞き手 / 「アンシャンテ」編集部  2003年10月31日 研究室にて)