学びの内容

児童文化学科  2020年度卒業論文紹介 Part2

2021年7月30日

大学案内にも載っている2020年度卒業論文の中から、児童文化系の卒業論文をふたつ紹介いたします。

「漫画『鋼の錬金術師』に見る人の成長—人と人とのつながりに着目して—」

荒川弘『鋼の錬金術師』全27巻を、「人と人とのつながりと、その中で育まれる人間の成長」という観点から、丁寧に分析した論文です。

分析の主たる対象は、「鋼の錬金術師」と呼ばれる主人公・エドワード・エルリックと、その弟アルフォンス・エルリックの兄弟。自らの失われた身体を取り戻すために旅に出て、出会った人々の協力を得ながら、さまざまな試練を乗り越えていくという物語の中で、彼らが、「人と人とのつながり」を通してどのように成長していったかを、画像も引用しながら緻密に明らかにしてくれています。

第1章は、『鋼の錬金術師』のあらすじと、主要キャラクターについての説明。第2章では、兄弟が壁にぶつかることで見出した決意と覚悟を、他のキャラクターとの関わりから読み解き、第3章では、「己」と「仲間」、そこに見出せる「可能性」を信じることに関して分析し、第4章では、兄弟が新しく得た考え方について検討されました。

そして最終章では、物語の中でたびたび言及されている「一は全、全は一」という教えを兄弟の成長の基盤としてとらえ、発達心理学からの学びも援用することで、物語世界にとどまらず、現実世界にも通じる、人間の成長に不可欠な人とのつながりについて思索を深められました。

『鋼の錬金術師』を「人生のバイブル」とする著者の深い思いに裏打ちされ、鋭く深い読みの展開された卒業論文です。




「子ども達のおしゃれの低年齢化の意味~ヘアアレンジの玩具・雑誌を手掛かりに~」

キッズファッション、キッズコスメ等、かつてはタブー視されていた「小さい子どものおしゃれ」が、今はひとつのジャンルとして成立するほどになってきました。そのことの是非を問う前に、今起こっている「おしゃれの低年齢化」の中身を、また、そこで働いている親子の心理を、昨今目立ってきた「ヘアアレンジ」を具体例として分析・解読した力作です。

最近の女児向け雑誌には、手軽に始められるおしゃれとして「ヘアアレンジ」が特集されています。女児たちに人気のアニメ「プリキュア」では、変身の際にドレスアップすると同時に、毛量がアップされ、きれいにカラーリングされることで、かわいさが強さとして表現されています。ここ数年の女児玩具では、着せ替えよりもヘアアレンジに特化したものが人気を集めています。こうした現象をていねいに読み解いていった結果、女児が髪型に寄せてきた普遍的な願望と同時に、エクステやヘアアクセサリーを使って手軽に楽しめる利点、あこがれの対象に近づける満足感等、表面化してきた女児の願望に応えやすい形で「ヘアレンジの低年齢化」が進んでいることが明らかになりました。いっぽうで、コスメよりはハードルが低いと同時に、女児が人形に対して、あるいは母親が女児に対して、ケアする形で行われる行為として、髪をいじること自体の意味も考究されています。

もともとあった子どもの願望が商品化されていく現象を通して、母子で共有する「願望の具現化」の解読を試みた卒業論文です。 


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