学びの内容

学科長メッセージ

発達心理学科 学科長 宮本信也 教授

心の発達とは

 成長と発達という用語があります。生物学的には、成長とは身体のサイズが大きくなること、発達とは心身の機能が向上することと言われます。
 身体のサイズ(ヒトの場合は身長)がそれ以上大きくならなくなった時点で、成長は止まったと考えられます。成長が止まるとは、子どもの身体から大人の身体になったということを意味します。雌雄に分かれている動物では、身体が生殖可能になったということもできるでしょう。
 では、発達はどうなのでしょう?
 心身の機能の向上には、心の発達と身体各部位の発達の2つが含まれます。私たちが「発達」という用語を聞いて思い浮かべるのは前者のが普通ですが、身体の各部位においても、年齢によりその機能の向上があります。
 例えば、赤ちゃんの脈拍数は1分間に120拍前後ですが、成人では70~80くらいとなります。これは、年齢が上がるにつれて、心臓が少ない回数で必要な血液を身体に送ることができるようになったからで、つまりは、心臓の働きが向上した、発達したということができるでしょう。
 ところで、身体各部位の働きは、老化による機能低下が避けられませんから、その発達には限界があります。心の発達についても、だいぶ以前は、発達するのは子どもであり、大人になると発達は完成する、という考え方がありました。でも、今は、この考え方は否定されています。
20代、30代、40代、50代と、人は、その年代ごとに主に取り組む事柄や課題は異なってきます。例えば、社会的な視点から見ますと、多くの人では、20代は仕事に就くことや仕事に慣れていくことが大きな課題となるでしょうし、40代は職場における若い人への教育指導が自分の役割になることでしょう。家族という視点からは、20~30代は自分の親御さんとの関係中心から自分自身のパートナーや自分の子どもとの関係を主とする方向への変化が起こりやすいでしょうし、50~60代では自分の親御さんの世話をするとか、自分の子どもが巣立っていくという変化が生じることが多くなるだろうと思われます。
 社会が複雑化し、たった一人で生きていくことが不可能となった現在の人間社会においては、私たちは、それぞれの年代ごとに、それまで経験していない事柄に出くわしたり、あるいは、出くわすことへの準備をしたりすることが求められてきます。その年代、その年代で、新しいことを学び、身につけ、何とかやっているのです。心の発達は、「成人式」で終わる訳ではなく、赤ちゃんから高齢の方までその年代ごとの心の発達があり、人は生涯にわたって発達し続けるのです。
 

発達心理学とは

 発達心理学は、心の発達の仕組みを明らかにすることを目的としています。
 子どもは、1歳半までに意味のある言葉を話し出すことが通常です。では、どのような状態が見られれば、その子はもうすぐ言葉を話すだろうと推測することができるでしょうか。あるいは、もし、1歳半で言葉を話さない子がいた場合、どのような働きかけをすると、言葉の発達を促すことができるでしょうか。こうした問いかけに対しては、言葉の発達の経過や言葉の発達に影響する要因を明らかにすることで、ある程度答えることができるでしょう。
 中学生や高校生の年代の子どもは、親御さんや学校の先生に言われると、正しいことを言われていると思っても、反発したい気持ちになる人が多くなります。そして、親御さんや学校の先生よりも、同級生や同年代の人たちから自分がどう見られているのか、とても気にしやすくなります。メールをして返事がしばらく来ないと、もしかして自分は嫌われているのではないかと疑心暗鬼になってしまうこともあるかもしれません。思春期と呼ばれるこの年代の人たちでは、こうした状況は決して少なくありません。少なくないということは、多くの人がそう感じる何か共通の関係する要因があることを思わせます。日本でも、外国でも共通する要因を見つけることができれば、それは、思春期の子どもの心の発達の仕組みの一つを明らかにすることにつながることでしょう。
 発達心理学における関心や研究の対象は、言語や認知など、人間の脳の高次な働き(高次脳機能)が発達する仕組み、親子関係や友人関係など、人と人とのつながりが発達する仕組み、さらには、道徳性や主体性など、人間としての存在を意味づけるとでもいえる複合的な心の働きが発達する仕組みなど、きわめて多彩です。方法論的には、こうした対象について、幼児、青年、成人などの各年代ごとの特徴を明らかにすることに取り組んだり、幼児から児童にむけての変化など、年代~年代への変化の有様や変化に関係する要因を明らかにすることに取り組んだりします。
   ところで、発達心理学は、人への支援にも応用されます。発達の問題や特徴を抱える子どもたちへの発達支援や子育てに悩む保護者の方への育児支援が代表的なものになりますが、その他、子どもの行動問題への支援や各年代における悩みへの支援まで、幅広い支援に関連しています。
 発達心理学は、人間のすべての精神活動の発達的変化と変化に関連する要因を探求するという基礎的な領域から、その成果を実際の支援に役立てるという応用領域までをカバーする、きわめて魅力的な学問といえるでしょう。
 
 
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