【報告】「国語学特講(現代語文法)Ⅱ」の授業でゲストスピーカーをお招きしました
2025年2月10日
石﨑晶子先生ご担当の「国語学特講(現代語文法)Ⅱ」の授業において、今年度も井上裕子先生をゲストスピーカーにお招きし、「社会との関わりの中で生かす日本語教育の知識」というテーマでご講演いただきました。
井上先生は、国語国文学科の卒業生であり、日本語教育副専攻の修了生でもあります。学生たちにとってまさにロールモデルとなる先生からのお話は、大変貴重で、日本語教育を学んだ先の未来を広げるものでした。

前半の「地域の日本語教育を考える—子どもの幼稚園生活を通じて」というトピックでは、外国人散在地域にフォーカスしたお話を伺いました。
お話の中でのケースを自分の身近な問題に引きつけ、考えを深めた学生も多かったようです。
お話の中でのケースを自分の身近な問題に引きつけ、考えを深めた学生も多かったようです。
井上先生は副専攻終了後、日本語教師として留学生への授業を大学で担当されていました。そして一度教師の立場を離れたそうですが、お子さんの入園を機に、日本語教育の知識が思いがけず役立ち、日本語教育と「再会」した形になったそうです。というのも、お子さんが入園した幼稚園には外国につながる園児が多数在籍していたからです。国籍や文化的背景、子どもをはじめ親の日本語の習得段階、日本の教育システムへの理解度や見通しの具合などが、かなりばらつきのある状況にあって、外国につながる親子への支援がもっと必要だということを実感したそうです。同時に、現場での保育者に対する日本語教育の視点からの支援も可能なのではないかということも見えてきたそうです。

後半の「外国につながる親子の支援—ぱすれるの活動」というトピックでは、具体的にどのような課題があって、どのような支援が可能なのか、日本語教育の領域だけでなく、保育の領域、地域行政の領域と、隣接領域の立場や視点が取り入れられる支援の様子をお聞き出来ました。
井上先生は〈外国につながる子ども・ことば研究会—ぱすれる @passerelle.lily〉の発起人の一人で、ぱすれるでは、文化的・言語的に多様な背景を持つ外国につながる親子への支援だけでなく、子どもの通う保育園・幼稚園・小学校への支援も含めた活動を目指しています。
外国につながる親子と日本人親子との交流の場となる地域の居場所作りや、保育者と外国につながる保護者が感じている難しさを明らかにするためのアンケート調査研究、多文化保育に関するコラムやおたよりテンプレートといった親子・保育者支援につながるWebサイト制作などの活動を順次行っているそうです。
これまでの調査研究ではわからなかった課題が判明したことなど、ぱすれるでの調査研究の内容は大変アカデミックなものでした。
また、講演会終盤には、実際の保育園の持ち物リストの書き換えワークも行われました。やさしい日本語に書き換えるという体験ワークでしたが、元々のリストの制作者である保育者の意図を汲みながらも、外国につながる保護者への情報伝達としての合理性をクリアするにはどうしたらよいか、学生同士でアイディアを出し合っていました。

以下、一部抜粋ですが、学生の声を紹介します。
・保育者と外国につながる親子、両方に寄り添い、抱えている不安や悩みを一つずつ解決していこうという取り組みは非常に素敵なものだと思いました。また、日本語教育を通してこういった接し方もあるのだと学べました。
・やさしい日本語とありましたが、やさしすぎると少し馬鹿にしているような言い回しと取れてしまう場合もあり、そこの基準が大変難しいと感じます。学習者が何を知っており何を知らないか、それを把握することの大切さというのを改めて知ることが出来た気がします。
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