学びの内容

キハラ ケンジ

木原 健次 准教授

専門分野

アメリカ文学・文化
批評理論 

自己紹介・学生へのメッセージ

■文学部 英語英文学科
 もともと学部生のときの専門は大きく異なった分野(商学部経営学科)でしたが、大学三年生のときに一人旅でニューヨークに行った際、そのエネルギーに満ちた空気や国際性の豊かさなどにすっかり魅せられてしまい、アメリカ研究に興味をもつようになりました。また、思想・哲学分野への関心があり、とりわけ、主にフランス発祥の現代思想とよばれる領域が面白いと思っていました。この二つの興味がアメリカ文学・文化研究という領域で交わることになり、現在に至ります。
 文学・文化研究は、「読む」「解釈する」という行為を深く掘り下げる営みです。私たちは誰しも物語の中を生きていて、自分のいる「いま・ここ」を、特定の文脈に位置付けたり何らかの暗黙の解釈コードを参照したりしながら理解しています。したがって、文学・文化研究から学べる「深く読む力」は、特定の文学作品や文化作品の理解を深めるだけではなく、それらが生み出され受け入れられた社会や、自分が生きている世界についての読み方を開いていくことにも必然的につながります。一冊の本を読んだ後で景色が違ってみえるような豊かな経験を、ぜひ在学中にたくさん経験していただきたいと願っていますし、そのために微力でもお役に立てるなら教師としてそれを超える喜びはありません。

■ 大学院 文学研究科
 20世紀アメリカ小説、特に1930年代〜冷戦期初期が専門で、Richard Wright, John Steinbeck, Carson McCullersといった作家を中心に研究してきました。近年特に興味のある研究キーワードは「所有」「個人主義」「労働」などです。「何を書くか」という「内容」(content)の問題だけでなく、「いかに書くか」という「形式」(form)の問題にも目を向けながら、明示的に社会的・政治的な内容を描くとされる「リアリズム/自然主義/プロレタリア文学」に政治経済とは無縁な自律芸術としての「モダニズム」を対置するような二項対立を問い直し、文学と社会・政治の関係を弁証法的に再考することを試みています。
 テクストの精読と批評理論の幅広い学習は、いずれも読み方を開いていくために不可欠なものです。読み方を広げることで、私たちは文学作品だけでなく、映画や漫画などを含めたより広い文化作品一般、さらにはメディアやSNSなどで見聞きするニュース、自分のこれまでの半生の経験、周囲の人々や初めて出会う人々とのコミュニケーション、そして自分というものについて、新たな理解の仕方や向き合い方を得ることができます。ぜひ好奇心のおもむくままに、貪欲に、かつ深い思いを込めてさまざまなテクストを読んでください。
担当科目
■文学部 英語英文学科
アメリカ文学史I
アメリカ文学講義C、D
3年セミナーⅠ・Ⅱ
特別演習Ⅰ・Ⅱ
英語圏文学

■大学院 英語英文学専攻
英米文学演習C
担当科目の内容
■文学部 英語英文学科
◇アメリカ文学史I◇ 
20世紀のアメリカ文学史を1)世紀転換期、2)1920年代(ジャズ・エイジ)、3)1930年代(大恐慌期)、4)1950年代(冷戦期初期、福祉国家の時代)、5)1980年代以降〜現代(新自由主義と多文化主義の時代)の5つに分け、20世紀に合衆国が経験した社会経済的状況のさまざまな変化をにらみつつ、各時代の代表的な文学・文化作品の想像力がその内容・形式において同時代の社会状況にいかなる形で応答しているのか、あるいはそこから逸れているのかを考えます。イメージが持ちやすいよう、適宜映画などの映像作品や画像も参照します。文学・文化と社会の関係について理解を深めることが第一の目的です。同時に、わたしたちが生きる21世紀の「いま」の社会や文化のありようがいかに生じたのか、その系譜の一端を、大国アメリカについての通時的学習を通して理解することも目指します。

■ 大学院 文学研究科
◇ 英米文学演習C◇
アメリカの文学テクストを「全き自律芸術」として読むのではなく、社会的・経済的・歴史的文脈のうちに位置づけて読む演習です。同時に、単なる素朴な反映論には陥らないかたちで文学を解釈することも重視します。合わせて、英語で書かれた文学作品や研究書・理論書を正確に読み通す読解力や、自分の読みを明晰かつ論理的に言語化する文章力も培うことを目指します。 
業績
■業績
主な学術論文
  • 「個と集合の弁証法の彼方に——ニューディール・リベラリズムと『怒りの葡萄』」、『アメリカ文学研究』第49号、2013年3月、1~18。
  • 「人民戦線、リアリズム、全体性の喪失:Chris Vials, Realism for the Masses (2009)を読む」、『レイモンド・ウィリアムズ研究』第五号、レイモンド・ウィリアムズ研究会、2014年10月、42-54。
  • “Between the Cultural and the Social: Carson McCullers’s The Heart Is a Lonely Hunter and the Rise of the Popular Front.” Nanzan Review of American Studies No.38. 2017年1月、3-19。
  • "'I Don't Own Any Property': Richard Wright's Native Son and the Rhetoric of Possession." Arizona Quarterly: A Journal of American Literature, Culture, and Theory, vol. 78, no. 1, Spring 2022, pp. 27-50.
 
経歴
■経歴
一橋大学商学部経営学科 卒業
一橋大学大学院言語社会研究科 修士課程修了
一橋大学大学院言語社会研究科 博士後期課程 単位取得満期退学
ニューヨーク州立大学オルバニー校英文学科 博士課程修了 博士号取得
東京工業大学、専修大学での非常勤講師を経て現職
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