白百合について

学長室の窓から No.3

2020年5月15日


 

もう一人の副学長の伊東玉美です。文学部国語国文学科教授で、専門は中世(平安時代後期から室町時代)の文学です。私は今年サバティカル(研究休暇)を頂いており、教壇には立たちませんが、副学長業務だけは継続して担当しております。
新年度の授業の始まりは新しいスタート。それが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今年は5月7日まで待たされました。そして、新しいけれど今までと連続感のあるスタートではなく、遠隔授業のみで大学の授業に出席するという、日来の私たちの予想を越えた、新しいスタートを切ることになりました。
それまで自分が漠然と思っていた以上に、自分が急激に新しく、深い存在になっていくのは、楽しみややりがいを通り越して、困惑や苦しみを伴うこともあります。しかし、こういう機会がなければ経験できなかったことを、多くの仲間と共に次々と経験できるのは、ラッキーなことでもあると思います。
現在会社員をしている私の娘は、小学校時代、担任の先生の意欲的なご指導のもと、その小学校出身の冒険家が、ヨットで太平洋を単独航海するチャレンジを繰り広げている、そのヨット上と小学校の教室を、画像・音声を介してやりとりする「洋上授業」に参加していました。その当時は、みんなとわいわいがやがや、多岐にわたることを総合的に学んだ印象だけがあったようですが、歳月が経つにつれ、その独特の学びから、連想され問い返されることがあるようです。
皆さんは今、白百合丸に乗って、太平洋上と日本ではなく、白百合の教室と自宅とを結ぶ、遠隔授業の航海へと出発したわけです。しかし、遠隔授業といっても、全てが対面授業と異なるわけではありません。授業でとりあげる題材をきっかけに、それぞれの参加者が考えたことを披露し合い、さまざまなやりとりをし、そこに共感や驚きが生まれる、という点では、今年と例年とで違いはないはずです。
次回は、そういう一例として、皆さんの先輩が書いてくれた、兼好法師の『徒然草』についての意外なリアクションペーパーの内容をご紹介するつもりです。どうぞお楽しみに。

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