白百合について

学長室の窓から No.4

2020年5月29日

他者のために
 

白百合女子大学
  学長 髙山貞美

ここ緑ヶ丘キャンパスでは、つつじが色鮮やかに咲いています。   

学生の皆さん、お元気ですか。遠隔授業にも慣れてきましたか。毎日何時間も遠隔授業を受けて、かなり疲れやストレスが溜まっているのではないでしょうか。栄養のあるものを食べ、適当に運動をしながら、バランスのとれた生活を送ってくださいね。 ここ2、3ヶ月のニュースは、まさにコロナ一色に染まり、これからの日常がコロナ以前とは大きく変わることを伝えています。仕事、運動、教育、社交、健康管理など、あらゆる面で新しい生活様式を工夫し、ソーシャル・ディスタンスを保つことが要求されることになります。

歴史をふりかえると、日本人は古くから幾度となく自然災害に遭い、疫病に苦しめられてきました。仏教が朝鮮半島の百済から伝来した飛鳥時代には、広く疫病が流行した時期があり、これが蘇我氏と物部氏の対立激化の一因となったとされています。また、奈良時代には政治の中枢にいた藤原四兄弟が、疱瘡(天然痘)の大流行によって相次いでこの世を去ったことも知られています。

第2波・第3波が予想される今回のコロナ禍では、じつに多くの人々の生命が奪われ、経済的にも計り知れないダメージを受けました。しかしその一方で、他者のために献身的に働く医療従事者の姿は、まるで闇夜を照らす光のように輝いています。そんな一例として、ある報道番組のニュースをここに紹介します。 
感染拡大の一途をたどっていた4月の中ごろ、大阪の医療現場では防護服が不足し、一部の医者たちはゴミ袋を着ながら患者の治療にあたっていました。大阪市長はかかる窮状を訴え、代用品として雨ガッパ(未使用)の提供を広く呼びかけました。その翌日、このことを知った一人の台湾人医師(大津市在住)が、インターネットを通して医療関係の友人仲間に働きかけたところ、なんと12,000着の雨ガッパの他にもマスクや手袋が続々と集まり、順次日本に送られることになったということです。
台湾には、「人が溺れていたら、自分が溺れていると思って手を差し伸べなさい」という言葉があるそうです。『孟子』からの引用とされていますが、愛と思いやりにあふれた言葉です。他者のことをわが身に置き換えて考える人が一人でも多くいるなら、不安と孤独を感じる状況にあってもきっと希望が持てると思います。

コロナ時代にソーシャル・ディスタンスを上手に保ちつつ、悲しむ人、苦しんでいる人に寄り添う人間になりたいです。明日の未来のために今日のこの日を「希望」を持って生きたいものです。

    

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