白百合について

学長室の窓から No.5

2020年6月11日

オオカミは来ないのでしょうか


白百合女子大学
  副学長 宮本信也

みなさんは、イソップ童話「羊飼いと狼」(オオカミ少年)のお話を聞いたことがあるでしょうか。タイトルを知らなくても、内容を知ると「あぁ、あれ」と思い出す人も多いと思います。ある羊飼いの男の子が、「オオカミが来た!」とうそをついて町の人たちを大騒ぎさせることを繰り返していました。何度も同じうそを言うので、しまいには町の人たちは誰も、この少年が言うことを信じなくなりました。ところが、ある日、本当にオオカミがやって来ました。少年は、みんなにそのことを伝えましたが、誰も本当だとは思わず、ヒツジが全部食べられてしまうというお話です。

新型コロナウイルスの感染状況が、一時に比べますと落ち着いてきています。3密を避けましょう、不要不急の外出を控えましょうと言われ、みなさんが自粛生活を続けた効果と思います。緊急事態宣言が解除され、全国で規制が緩和されてきました。みなさんも、買い物など出かける機会が少しずつ増えていることと思います。
一方で、第2波、第3波が来るので、感染予防対応は続けていきましょうとも言われています。規制緩和がされたばかりの今、そして、数十人規模の感染者報道をときどき見聞きする今、みなさんも、そうだまだ気を緩めてはいけない、気をつけていこうと考えていることと思います。
でも、ときどきあちらこちらで感染者が出たという報道は出るものの、自分の周りでは大きな感染騒動が起こっていない今の状況があと1か月続いたら、みなさんはどう思うようになるでしょうか。第2波、第3波に注意しようと言うけれど、もう大丈夫なんじゃないのかなと感じるようになるのではないでしょうか。実際、大きな感染の山が来ていなければ、そのように感じることは何もおかしくありません。そして、いつの間にか3密も、手洗いも、マスクも、あまり気にかけないようになるかもしれません。

ワクチンも治療薬もないウイルス感染症は、ほとんどの人が感染して抵抗力を持つようにならなければ、本当に終息することはありません。新型コロナウイルスとは違うタイプのコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARSsevere acute respiratory syndrome)は、発生から終息するまでに9か月間かかりました。SARSの致死率は約10%前後ですが、新型コロナウイルスのそれは3%前後と推定されています。一般に、感染症においては、死亡する割合が小さいほど軽症あるいは無症状の感染者の割合が多くなることが想定され、感染が広まりやすく、終息するまでに時間を要すると考えられます。今回の新型コロナウイルス感染についても、終息までに12年間を要するだろうとも言われています。

2波、第3波に気をつけましょうという呼びかけは、いつの間にか耳慣れてしまうかもしれません。「もう大丈夫」と言えるのは、ワクチンが完成し、国民のすべての人に行き渡るだけの数が揃ったときです。それは、どんなに早くても、来年の春以降になると思われます。オオカミは来ると考えて、せっかく習慣化した感染予防対応を忘れないようにしていただきたいと思います。  


追伸

ちょっと季節が早いのですが、夏の花ひまわりをお届けします。ひまわりの花言葉(憧れ)とは違いますが、ひまわりは、元気!という気持ちを思い起こさせますよね。この写真は、羊蹄山とその周りに咲くひまわりです。羊蹄山は、蝦夷富士とも呼ばれる北海道の山です。

 
            

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