白百合について

学長室の窓から No.10

2020年9月24日

「いま」を大切に生きる


白百合女子大学
  学長 髙山 貞美

 朝夕に涼しさが感じられるこのごろです。 

 皆さん、お元気ですか。夏休みが瞬く間に終わり、921日から後期の授業が始まりました。後期授業については、東京都の感染状況やその他諸条件を考慮し、遠隔授業を前提としつつも、感染防止対策を講じたうえで実技・実習等の一部の科目は対面形式で実施しております。また、登校が困難な学生に対しては、代替方法による受講ができるよう十分に配慮いたしますので、どうぞご安心ください。

 この季節の夕暮れになると、この世を去った人々のことがふと思い出されます。去る96日、恩師の一人であるアルフォンス・デーケン先生(19322020)が逝去されました。北ドイツに生まれ、イエズス会士として来日し、1970年代から「死の哲学」「人間学」等の講義を担当され、日本における死生学の草分けとして広く知られていました。上智大学で長く教鞭をとられ、私はそこで後輩の教員として接する機会に恵まれました。

 デーケン先生の講義の素晴らしさはもちろんのこと、温かいお人柄とユーモアのセンスにも深く魅せられました。「最新の厚労省の統計によると、日本人の死亡率は100パーセント(笑い)」「デーケンひとりでは何にもデーケン(=できない)!」。いつもの台詞なのですが、つい笑いがこぼれます。その澄んだ瞳の奥にすべてを受容し包みこむような不思議な力がありました。 

 ところで、先生は8歳のときに実妹を白血病で亡くしています。その妹は、家族に「天国で会いましょう」と言い残して息を引き取ったそうです。また、反ナチス運動に関わっていた祖父は、白旗を掲げて連合軍を迎えたにもかかわらず、目の前で連合軍の兵士に射殺されたとのことです。このような筆舌に尽くしがたい悲しみを幾度も体験されたのでした。

 デーケン先生が提唱された「死への準備教育」(Death Education)とは、いつか誰にでも必ず訪れる「死」の現実を受け入れるための心構えであり、限りある「時間」と「生命」の尊さ・かけがえのなさを学ぶための教育にほかなりません。ウィズコロナの時代に新しい日常を生きる私たちが、感謝の心を忘れずに「いま」を大切に生きていくことができますように、と願わざるをえません。

 
        





                          
             
  

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