解題の解説

中京大学文学部准教授:浅岡邦雄氏編

《凡 例》本編は、白百合女子大学図書館が所蔵する貴重書のうち、明治初期に刊行されたものの解題である。 配列は分類番号順とし、同一のものは刊行年月の順とした。記述は以下の順に従う(記述を欠くものもあり)。 書名、書名読み、請求記号、著訳編者名、刊年(月)、出版者、巻冊(丁・頁)、印刷・製本、大きさ、表紙、見返し、印記、解説等。 角書きと本書名の間には・(中グロ)を入れた。


【西国立志編(さいごくりっしへん)】(請求記号283/Sm4/1〜8)
斯邁爾斯(スマイルス)著、中村正直訳、〔明治13(1883)年〕、木平愛二ほか、全8冊、整版・和装、22.5×15.1cm。表紙は白無地、左肩に題箋「西国立志編 原名自助論 第一冊(第二冊〜第八冊止)」

解説)本書『西国立志編』は、明治期最大のベストセラーでありロングセラーともなった書物で、広く青少年に愛読されたもの。本書の影響力は大きく、多くの有名・無名の人々がこの書物から感化を受けたことを書き残している。原著は、1868年4月中村正直が英国から帰国する際、友人のフリーランドから贈呈されたもので、帰国後友人の杉浦愛蔵(譲)から進められて翻訳。明治3年から4年にかけて、全11冊として刊行された。本書8冊本は、奥付に「六書房蔵版」として、「木平愛二、高橋金十郎、稲田佐兵衛、稲田源吉、青山清吉、福田仙蔵」の六書肆の名があり、稲田源吉に「玉海堂之章印」と押捺。なお、この8冊本の刊行年については不詳ながら、『東京日日新聞』明治13年7月10日掲載の広告に「中村敬宇先生訳 西国立志編 合巻八冊 定価金一円/這回学校所用ノ為メ合本ニ為シ生徒ノ購求シ安カランヲ欲シ価ヲ廉ニシ発売ス」とあることから、刊行時期は明治13年7月頃と推考される。

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