解題の解説

中京大学文学部准教授:浅岡邦雄氏編

《凡 例》本編は、白百合女子大学図書館が所蔵する貴重書のうち、明治初期に刊行されたものの解題である。 配列は分類番号順とし、同一のものは刊行年月の順とした。記述は以下の順に従う(記述を欠くものもあり)。 書名、書名読み、請求記号、著訳編者名、刊年(月)、出版者、巻冊(丁・頁)、印刷・製本、大きさ、表紙、見返し、印記、解説等。 角書きと本書名の間には・(中グロ)を入れた。


【上木自由之論(じょうぼくじゆうのろん)】(請求記号316.1/To16)
トクヴィル著、小幡篤次郎訳、明治6年11月、小幡篤次郎蔵版、全1冊(16丁)、整版・和装、22.3×15.2cm。表紙は濃藍色の地に網目模様、左肩に題箋「小幡篤次郎著/上木自由之論 全」、見返しは黄色和紙を三ツ割にし「小幡篤次郎/上木自由之論/明治六年十一月 小幡氏版」とし、左下に「小幡之印」の方形朱印を捺す。

解説)本書は、フランスのトクヴィルが著した『アメリカのデモクラシー』中の出版自由の一節を翻訳したもので、「古来日本ニテハ出版ノ事ヲ論スル者ナク其著書モアラサレハ学者未タ事ノ重大ナル所以ヲ知ラサル」ため、抄訳して読者に供するものであると序に述べている。出版の自由につき紹介して一書とした最初のものである。トクヴィルはフランスの代議士で外務大臣を歴任、かつ歴史学者としても著名。代表作に『旧体制と大革命』がある。トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』は岩波文庫に収録。訳者・小幡篤次郎は中津藩士で、元治元年福沢諭吉の塾に入門して英学を修め、以降慶応義塾の幹部として福沢を助けた。本書は『明治文化全集』第2巻「自由民権篇」に収載。

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