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2019年度卒業生代表「感謝の言葉」と学長メッセージ

2020年3月14日

2019年度卒業生・修了生のみなさま
ご父母のみなさま

2019年度学位記授与式の中止に伴いまして、卒業生代表「感謝の言葉」と
学長メッセージ「今日という日に永遠を学ぶ—学位記授与式式辞に代えて」を紹介いたします。

 

2019年度卒業生代表 感謝の言葉 

 今回の学位記授与式については、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により中止になり、卒業生一同、大変残念に思っております。書面ではございますが、入学から4年間、私たちを支えてくださった学長先生はじめ教職員の皆様には心から感謝を申し上げます。
 今から4年前の春、不安や緊張もありながら、4年間の大学生活に期待を抱き、私たちは白百合女子大学に入学しました。小学校から12年間同じ学校に通っていた私にとって、大学への入学は新しいことへのチャレンジの連続でした。入学式の日はみんなと馴染めるだろうかとドキドキしていたのをよく覚えています。
 私たちは四季の変化をはっきりと感じることのできるこの素晴らしいキャンパスで4年間の学生生活を送りました。この場所で素晴らしい友人や先生方、職員の方々と出会いました。先生方はいつも丁寧に、そして親身になって私たちに指導してくださり、勉学はもちろん、社会に出る上で大切なことをたくさん教えていただきました。職員の方々も相談事に対して真摯に向き合い、話を聞いてくださいました。また大学生活で出会ったたくさんの友人とは、いつも時間を忘れるほど会話を楽しみ、笑い合い、時には励まし合ったり、辛い時には助け合ったりと多くの時間を過ごし、数々の忘れられない思い出が溢れています。卒業後もこれまでのようにお互いに助け合い、刺激し合える関係であり続けたいと思っております。
 私の学生生活を振り返ってみて印象に残っているのは、グローバルビジネスプログラムと海外への留学、ゼミでの学びです。グローバルビジネスプログラムでは様々な講師の方のお話を聞き、私たちがこれから一人の女性としてどのように社会で活躍するべきかを考えることが出来ました。そしていろいろな授業を通して、社会人になるために必要なことを学びました。その中で特に印象に残っているのは「伝えることと伝わることは違う」という言葉です。これは人に何かを伝える時、自分が伝えたいことと相手に伝わっていることが必ずしも同じとは限らないということです。相手にどのように伝わるかを考えて、自分の意見を伝えていかなければならないと考えさせられました。
 フランスでの半年間の留学は価値観が大きく変わる経験となりました。初めは自分の言葉が通じないことが多く、コミュニケーションをとるのに苦労しました。しかし、様々な国籍の学生と出会い、多様な価値観や考え方に触れて、自分の視野を広げることが出来ました。自分の考えが正しいと思いこむのではなく、一人ひとりが違った考えをもっていることを理解することでお互いに尊重し合える関係が築けるのだと実感しました。そしてお互いの違いを認め合うことで初めて見えてくることがたくさんあり、より仲を深めていくことが出来ました。また初めて親元を離れ生活したことで、両親のありがたみを改めて実感する機会となりました。
 ゼミではヨーロッパの歴史についてフランス語を通して研究しました。現代を語る上で歴史を学ぶことは欠かせません。二度の世界大戦など悲惨な歴史を忘れることなく、今を生きる私たちが過去の事実として受け入れて理解しておかなければならないのだと学びました。またフランス語で受講することで、表現技法を学びより一層フランス語の理解を深めることができ、留学の際にもゼミでの学びは大変役に立ちました。
 私はこの白百合という環境のなかで、勉学を通じて多くのことを経験し、より豊かな人間に成長したと感じています。これから私たちはこの4年間で得た様々な知識や経験を生かして、一人ひとりが人として、また一人の女性としてどうあるべきかをよく考え、社会の中で実践していかなければならないと思います。
 最後になりましたが、これまでご指導くださった先生方、学生生活を支えてくださった職員の皆様に心より感謝申し上げます。そして、私たちの成長を温かく見守ってくれた家族に心を込めて「ありがとうございました」と伝えたいと思います。
 白百合女子大学の益々のご発展をお祈りいたしまして、卒業生一同の感謝の言葉とさせていただきます。

令和2314日 白百合女子大学卒業生代表 細沼知花

 

今日という日に永遠を学ぶ—学位記授与式式辞に代えて  

314日に予定されていた学位記授与式はご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う諸事情により、中止にせざるを得ませんでした。実施を楽しみにしていた卒業生・修了生の皆さんに改めてお詫び申し上げます。
 御卒業の皆さん、式典はかなわなかったとはいえ、皆さんが卒業されたことは確かであり、学位記が手元に渡されたことも確かです。遅ればせながら、心からご卒業をお祝い申し上げます。このたびの感染症の問題だけではなく、人生には招かざる客のような出来事が起きるものです。皆さんの学生時代の間にも、つらいことや悲しいこともあったはずです。それらを乗り越えてきたことに敬意を表します。他人には見えない自分だけの苦労や悩みの一つ一つも、乗り越えられたことで、皆さんの立派な業績となっています。

 これからの新しい人生のバネとなるこの隠れた業績は、皆さんひとりの力だけによるものではなく、保護者の方々をはじめ、ご家族、友だち、そして教職員の皆様がたの、細やかで深い愛情と力添えの「お陰」があってのことです。
 今「お陰」と述べましたが、何よりも、皆さんの誕生のときから、来る日も来る日も、一日たりと怠ることなく、あたかも神仏にお仕えするように、大切にいつくしみ育てて下さった、御家族の「お陰」を忘れてはいけません。このような必ずしも目には見えない数々の「お陰さま」こそは、これまでも、そして、これからも、人生の力の源泉です。
 聖書には「隠れたる神」とか、「隠れたことを見ておられる神」という表現があります。神様はまさにこの「お陰様」の慎ましさのうちに隠れておられるのではないでしょうか。この「お陰さま」に対する感謝を忘れずにいれば、これからも皆さんの歩みの上に大きな力、大きな恵みが働くことでしょう。

 さて、東京オリンピック・パラリンピックは、無事に開催されるでしょうか。オリンピックといえば、二年前の平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックで強く記憶に刻まれていることがあります。スピードスケート女子500メートル金メダリスト、小平奈緒選手のことです。
 小平選手はオリンピックを除けば、この種目では数年間敵なしの状態で、世界選手権や国内での大会で、のべ24連勝もしていました。ですから金メダルの第一候補ではあったのですが、なんと最大のライバルであり、また友人でもある韓国人李相花(イサンファ)選手は、バンクーバー、ソチの二つのオリンピックで金メダルを取り、今度は3連覇を期してこの種目だけに出場するという戦略で臨みました。開催国韓国国民から彼女に寄せられた期待はとてつもなく大きなものでした。
 結果はご存知の取り、小平選手の感動的な勝利でした。しかし、全世界に感動を与えたのは、この勝利にもまして、勝利のあとの小平選手の振る舞いでした。小平選手は、2位に終わって、泣いているイサンファ選手に駆け寄り、抱きしめ、互いの健闘を称え合い、また「あなたのことを尊敬しています」と声をかけ、ふたりはいっしょにコースを一周したのでした。
 あとで知ったことですが、このシーンに先立って、小平選手がオリンピック新記録を出し、金メダルを信じて沸き立っている日本人応援席に向かって、人指し指を口に当てるポーズで「静粛に」と呼びかけたのでした。直後のレースで滑るイサンファ選手へのさりげない気遣いでした。こうした美しい姿は、韓国国内はもとより、世界中の称賛するところとなりました。
 小平選手については、テレビなどでその後もいろいろと取り上げられましたが、ある番組で、彼女は、自分の「文化的遺伝子」ともいうべきもの、一番大事にしてきた教えとしてあげた言葉がありました。インド独立の指導者マハトマ・ガンジーのこのような言葉でした。


 「あたかも明日死ぬかのように生き、あたかも永遠に生きるかのように学びなさい」
 (Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.)

  小平選手が、このような言葉を自分の座右の銘にしていること、そして、それが、決して背伸びした理想としてではなく、彼女の生き方、あのような振舞い方の中に生かされていることに感心します。

 さて、皆さんの4年間はどのようなものだったでしょうか。もしかして、傍目にはわずか何秒か、程度の成長でしかないかもしれません。しかし、その小さな業績には、やはり長い時間と努力が秘められていたのだと思います。一日一日に注がれた精神のエネルギー、一日一日に学んだこと、それはガンジーが教えたように、永遠にまで及ぶ価値があるのではないでしょうか。人生の長さは人それぞれですが、ないかもしれない明日ではなく、確かに与えられている今日という一日を精一杯に生き、また、その一日の中で、学ぶ心を忘れないようにするなら、その一日は永遠の発見につながるでしょう。

 「永遠」ということはとらえがたい言葉ですが、皆さんは本学の教育の中で、その意味の一端に触れてきたことと思います。

 「愛は、忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。・・・愛は決して絶えることはない」と。(Iコリント13章)

  
不思議なことですが、パウロは、愛について、それほど目立つような立派な行為を上げてはいません。むしろ、だれでもが生きるうえで大切にしている小さな気遣いや礼義、やはり傍目には目立たないちょっとした忍耐こそが、本物の愛であり永遠の価値があるのだと言っているのです。

 これからの皆さんの社会生活や家庭生活では、必ずといってよいほど、いろいろ厳しいことがあるはずです。そうした中で、永遠などといったことは幻想のように思われるかもしれません。しかし、パウロがいう慎ましい愛は私たちの幸福な人生の秘訣です。ガンジーがいう「永遠に生きるかのように学べ」という、その「学び」もまた、つまりは「探求する愛」であり、終わることのないものです。


 皆さんのこれからの人生が、そのような永遠に及ぶ愛と学びの日々であることを願ってやみません。

令和2年314日 白百合女子大学 学長 田畑 邦治



本件に関するお問い合わせ先
白百合女子大学 事務局長室
電話 03-3326-2547

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