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科目一覧へ戻る | 2025/03/14 現在 |
科目名/Course title | 認知心理学特論/Special Topics in Cognitive Psychology |
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担当教員(所属)/Instructor | 鈴木 忠 (人間総合学部発達心理学科) |
授業科目区分/Category | 修士 発達心理学専攻専門科目 |
授業形態/Type of class | 演習 |
開講期/Semester | 2025年度/Academic Year 前期/SPRING |
開講曜限/Class period | 水/WED 3 |
対象所属/Eligible Faculty | 大学院文学研究科修士課程/Graduate School of Liberal Arts,大学院文学研究科博士課程(後期)/Graduate School of Liberal Arts,大学院文学研究科博士課程(前期)/Graduate School of Liberal Arts,大学院文学研究科博士課程(後期)言語・文学専攻/Graduate School of Liberal Arts Department of Language and Literature |
対象学年/Eligible grade | 1年 , 2年 |
単位数/Credits | 2 |
副題 /SubTitle |
認知の発達と身体化 |
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授業のねらいと達成目標 /Course Objectives |
この授業のねらいは2つある。一つは、認知心理学/認知科学の根本問題のひとつである記号接地(symbol-grounding;言葉などの記号は人間の頭の中で現実世界とどのように対応づいているか)をめぐって展開された今井むつみの著書を読むことを通して、人間の学習と認知発達について考えることである。もう一つは、同じく記号接地の問題意識から展開し、認知研究の基本的な考え方となった身体化認知(embodied cognition)について学ぶことである。身体化認知は、認知を頭の中の情報処理(表象操作)としてだけ考えるのでなく、いかに環境をリソースとして頼りにし用いているかに焦点をあてたアプローチである。状況的認知(situated cognition、grounded cognition)もほぼ同じ考え方である。 |
授業概要 /Course description |
授業ではまず、子どもの言語獲得を題材にし、人間独自の学習の特質を論じた『言語の本質』(今井むつみ・秋田喜美著)を読む。次に子どもの誤答を生み出す認知過程の詳細な調査結果をもとに、子どもの学びと教育への提言をまとめた話題の書『学力喪失』(今井むつみ著)を読む。今井が言うように「すべての誤答には子どもなりの理屈がある」。誤答を単なる「正解でない回答」として済ませるのでなく、子どもなりの能動的な認知的所産として、その生成過程を理解することはピアジェ以来の認知心理学の核心である。2冊の著書では、認知的リソース、日常経験との相互作用、実行機能の理論などを適用して子どもの「つまずき」を解明し、「生きた知識」(=使える知識)がどうすれば身につくのか、そのためにどのような支援が必要かが説得的に論じられる。 学期の後半では身体化(状況的)認知に関する専門書を読む。認知や知識が「身体化されている」とする見方は、認知哲学者A.Clarkが提唱した「拡張された心」(extended mind)という考え方を一つの契機とする。コンピュータやインターネットの利用を単なる道具使用とみなすのでなく、認知機能そのものの外部化と捉え、心の概念を身体の外へ拡張して捉えるべきだとする考えである。人間の認知は「表象操作」を探求すれば明らかになるわけではなく、外界にあるモノを使って問題を易しくし認知的負荷を減らそうとしており、それを含めて人間の認知や学習を捉えるべきだとするのである。邦訳書『知識は身体からできている』は身体化認知に関して、日本語で読める数少ない解説書である。言語や概念的知識を獲得する上で、感覚や身体的経験がいかなる役割を果たすかについて、脳科学的・神経科学的観点からの知見が詳しく解説されている。 以上を通して、認知心理学/認知科学の深化した考え方を学ぶ。 |
授業計画(授業の形式、スケジュール等) /Class schedule |
第1回 オリエンテーション 第2回 『言語の本質』を読む(1) 第3回 『言語の本質』を読む(2) 第4回 『言語の本質』を読む(3) 第5回 『言語の本質』まとめ 第6回 『学力喪失』を読む(1) 第7回 『学力喪失』を読む(2) 第8回 『学力喪失』を読む(3) 第9回 『学力喪失』まとめ 上記の2冊の著書では、子どもの「つまずき」を解明し、「生きた知識」がどうすれば身につくの か、「つまずき」のメカニズムにもとづいた支援が説得的に論じられる。 第10回 『知識は身体からできている』(フィンチャー・キーファー著)を読む(1) 第11回 『知識は身体からできている』を読む(2) 第12回 『知識は身体からできている』を読む(3) 第13回 『知識は身体からできている』を読む(4) 第14回 『知識は身体からできている』まとめ 第15回 まとめ |
準備学習・履修上の注意 /Notices |
毎回読むテキストの分量がかなり多いので、そのつもりで受講してほしい。受講者が交代でレジュメを作り発表する。全員がテキストの内容について自分の意見をまとめ、討論に参加することが求められる。 |
教科書・参考書等 /Textbooks |
【教科書】 ・『言語の本質』(今井むつみ・秋田喜美著、中公新書、2023) ・『学力喪失』(今井むつみ著、岩波新書、2024) 【参考書】 ・『知識は身体からできている』(フィンチャー-キーファー著、新曜社、2021) |
成績評価の方法 /Evaluation |
【評価方法】 授業での発表と討論への参加(80%)およびレポート(20%)により評価を行う。 |
備考 /Notes |
【討議(ディスカッション、ディベート)を取り入れている】 【発表(プレゼンテーション)を取り入れている】 |
科目と卒業/修了認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)の対応一覧
/Diploma Policy
https://www.shirayuri.ac.jp/campus/enrollment/diploma01.html