学びの内容

2023年度「論文講読基礎演習」授業風景

2023年6月8日

 今回は2年生必修科目『論文講読基礎演習』をご紹介します。この授業では、心理学の研究論文を初めて手にする学生が、論文を丁寧に読み進めながら基本的な読み方を修得することを目的としています。“論文を読む”というと、難解な文章が出てきて自力では読み進められないイメージをもたれることが多いですが、1つの論文につき4回かけてワークシートに沿って要点や構成をつかみながら読むことで、論文から情報を引き出す力が身についてきます。論文の読み方に慣れていくと、レポートの書き方の参考になったり、結果で示されている統計処理について詳しくなったり、ゆくゆくは自分なりのテーマで卒業論文に取り組むときの文献検索の手がかりになったり、と心理学の学びの礎が築かれていきます。

 

 演習型で20人ほどの小グループに分かれての授業のなかで、それぞれの意見発表を聞きながら、論文に対して考察する時間も十分に設けられています。
 実験法論文のグループでは、「じゃんけん」の理解の発達過程に関する研究論文を通して、身近な題材をもとに実験を設定することができる面白さ、身近だからこそ改めて理論的に考え直すことの難しさ、そして実験を重ねることによって「じゃんけん」が発達検査の課題のひとつとして確立するまでのプロセスについて考えを深めます。
 調査法論文のグループでは、大学生を対象に身体感覚と“悩むこと”との関連を検討した論文を通して、身体と心理についての理論を基にどのような質問項目が作成されるのか、身体感覚に目を向けることが悩むことを肯定的に捉えて健康的に悩むことへとつながるという理論をいかに実証できるかについて考えます。
 観察法論文では、同じく女子大学生を対象に乳児との接触経験の有無によるあやし行動の差を検討した論文を通して、乳児を観察するときの倫理的な配慮や、大学生のあやし行動をどのような視点で観察して行動分類や音声解析をするかについて考えます。

  

 観察法論文で説明されている研究場面をより想像しやすいように、赤ちゃん人形に触ってみる時間も作りました。「想像よりずっと重い!」という声が多く、人形とわかりつつも大切に抱き上げ、頬や頭をなでるという“あやし行動”が自然と出る受講生もたくさんいました。受講生は、いろいろな論文を読み込むうちに、研究手続きに詳しくなり研究の視点を養っていきます。
沓名 桂子
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