学びの内容

【OC報告】8月26日(土)オープンキャンパス報告 模擬授業について

2023年10月9日

8月26日(土)に今年度4回目のオープンキャンパスを開催しました。
晴天に恵まれ、たくさんの方に足をお運びいただきました。ありがとうございました。
それでは、第4回オープンキャンパスで行われた模擬授業の内容についてご紹介いたします。

模擬授業①
古典文学「恋をすると、歌が聴きたくなるのはなぜ?」
担当:萩野了子先生

恋をすると、歌が聴きたくなったり、歌いたくなったりするのはなぜなのでしょうか。そもそも、「歌」とは一体何なのでしょうか。万葉仮名で書かれた古代歌謡から、演歌やJポップといった現代歌謡に至るまで——歌には時代を越えて共有される特徴が見出せます。それは、音数律(音節の組み合わせ・リズム)、比喩表現、繰り返し表現、合いの手(感動詞や接頭語)といったものです。これらは、我々が日常会話で使用する言語文体にはあまり馴染まない特徴だと言えます。日常的な会話は、人と人とが情報を伝達し合うために為されるものです。これに馴染まないということは、歌が非日常の言語文体によって成り立っていることを示しています。
歌の発生は、信仰を伴う神事の場に根ざしているとも言われます。日常的な人対人の言語文体とは異なるもの、いわば、人対神の空間で用いられる非日常の言語、これが「歌」である——この捉え方が、そうした説を裏付けるのです。
恋とはときめきであり、失恋とは絶望的な異常事態であり、共に非日常体験です。だからこそ恋は、日常生活で用いる言語とは異なる文体、非日常言語であるところの「歌」を要求するのです。時代を超えた人々の心模様について、歌の言語文体の分析を通して感じ取ることが出来ました。
 

 
模擬授業②
近代文学「東京というテーマパーク —路面電車と東京の文学」
担当:井上隆史先生
 
今から 120年前の1903 年、東京に初めて路面電車が開通しました。この時代を生きた作家は、作品内に路面電車を登場させることが度々ありました。今回は渋谷を中心とした東京の風景と、同時代の作品について読みました。 
1931(昭和 6)年の渋谷の駅前の写真には、路面電車が走っています。大岡昇平の『少年-ある自伝の試み』という作品には、中学生の頃、落ちている無効の乗車券を使って電車に乗ったことや、走り始めたボギー車(台車二組の上に車体を乗せた鉄道車両)に飛び乗り宮益坂を下ったことが描かれています。 大岡昇平は渋谷にある大学に通い、旧東急本店の近くに住んでいたそうです。路面電車のある風景の中で暮らしていた作家でした。 
また、夏目漱石も路面電車を描いた作家です。 夏目漱石がイギリスに留学し、ノイローゼに陥り帰国したことは有名ですが、漱石が帰国したのはちょうど路面電車が開通した1903 年のことでした。 『三四郎』では大学の講義が物足りなくなった三四郎に対し、友人の与次郎が「電車に乗って、東京を15.6辺乗回しているうちには自(おのずか)ら物足りる様になるさ」と言い、共に路面電車に乗る場面があります。未完となった『明暗』にも路面電車が登場します。『三四郎』とは対照的に、ここでは窓から見える「黒い水と黒い土手」「さむざむしい秋の夜」などの色彩・景色と共に、悩みを抱える主人公の姿が描かれていました。 
作中に描かれる乗り物に注目する事で、その時代や社会、歴史、登場人物の心情への効果などの様々なことを読み取る事ができます。 近代文学を読む上での多角的な視点を学ぶことができました。 
 
※路面電車が都営電車(都電)となってから今年で80年になります。授業内で扱った夏目漱石を始めとする作品と作家に関するコラム「都電ゆかりの文学者」が、「交通新聞」で掲載されました。大学 HP で読めますので、ぜひご覧ください。
https://www.shirayuri.ac.jp/news/2023/qelo8900000016yu.html
 
 
10月21日、22日の土日には学園祭が開催されます。
22日には入試ガイダンスイベントもございますので、多くの方のご来場を心よりお待ちしております。
 
こちらに掲載しきれなかったオープンキャンパス当日の様子や日頃の学科の様子は、
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