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【報告】「国語学特講(現代語文法)」の授業でゲストスピーカーをお招きしました

2024年3月7日

石崎晶子先生ご担当の、12月13日(水)「国語学特講(現代語文法)」の授業において、本学OGでもある井上裕子先生をゲストスピーカーにお招きし、「社会との関わりの中で生かす日本語教育の知識」というテーマでお話をして頂きました。

 
井上先生のお子さんが入園した幼稚園では、外国に繋がる背景を持つ親子が多くいたそうです。フランス人、韓国人、中国人、ドイツ人とイタリア人の夫婦、パキスタン人の夫婦など……。日本語のレベルもさまざまで、読み書きはできるが話せない、話せるが読み書きは難しい……というようにばらつきがあります。そしてもちろん、子供の状況もさまざま。言葉だけでなく、文化的な背景も違います。
保育者が園児たちとどう向き合うか、そして家庭内では親のルーツ、言語や文化をどう子供に伝えていくか、複数の言語環境で育つ子供が直面する課題などに対して、日本語教育の立場からどう向き合っていくかを考えます。
 
皆さんは「やさしい日本語」を知っていますか?
日本語を母語としない人に向け、工夫してわかりやすく書かれた日本語を指します。
阪神淡路大震災が起きた際、外国人住民は日本人住民よりも死亡率、負傷率が高かったそうです。言葉の壁のために避難が遅れたり、救援が行き届かなかったりすることがないように、必要な情報を届けるために提唱されたのが「やさしい日本語」です。例えば、「避難して下さい」という言葉。「にげてください」なら、より多くの人が理解できますよね。(※)
言葉の壁のために避難が遅れたり、救援が行き届かなかったりすることがないように、必要な情報を届けるため提唱されたのが「やさしい日本語」です。
授業の後半には、幼稚園で配られる「運動会のお知らせ」をこの「やさしい日本語」に書き換えるワークを行いました。「二重否定を使わない」、「受身形や使役表現をできる限り使わない」といった、現代語文法の授業で学んできた知識を用います。「雨天」を「雨がふったときは」、「園庭」を「幼稚園の庭」、「記名を忘れずに」を「持ち物に名前を書いてください」にするなど、言葉を書き換えていきます。「これじゃ難しいかな?」「この言葉はそのまま使おう」など、学生たちは相談しながら課題に取り組んでいました。
井上先生はやさしい日本語を用いたプリントを作成し、実際に幼稚園で使ってもらっているそうです。また、外国のルーツを持つ方々、外国と繋がりのある家庭の方々が地域でふれあいを持つことを目標とし、「ぱすれる」という親子サロンも開いています。
 
日本語教育副専攻は、「日本語を教える先生になる」という印象が強いかもしれませんが、日本語学を通して、このようにたくさんの人に関わることができると知りました。
井上先生、素敵なお時間をありがとうございました。

 
親子サロン「ぱすれる」は定期的に開催をしています!
副専攻受講者はもちろん、ボランティアは初めてという学生の皆さんも大歓迎。
ぜひ情報を確認してくださいね。(インスタグラム @passerelle.lily
 
※「やさしい日本語」については、吉開章さんが 2022 年に本学で講演をしてくださいました。詳しくは報告記事をご覧下さい。
なお、吉開章さんの御著書には『入門・やさしい日本語 外国人と日本語で話そう』株式会社アスク出版があります。
 
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