白百合について

学長室の窓から No.6

2020年6月23日

リアクションペーパーの楽しみ


白百合女子大学
  副学長 伊東玉美

『徒然草』の中には「本物は、不在という形で存在する」という趣旨の段がいくつかある、という話をした時、日来あまり熱心には授業に出席していなかった学生が、「今日の話から連想した」として、次のようなリアクションペーパーを提出してくれました。

「私は派手な気風の地域出身で、高校生の時からブランド物が大好きだ。東京に出てきたら、さぞかしみんな、ばりばりのブランド物を持ち歩いているだろうと思ったら、あれやこれやのロゴのついたブランド物を持っている人はわずかしかいない。あれ、みんなブランド物は持っていないのかな、と思ったら、ブランド物はブランド物でも、いかにもそのブランドの物を持っています、と分かるデザインではなく、見えないところにそのブランドの品であることが刻印されているようなものばかり持っていることに気がついた。東京で本当にブランド物に身を包んでいる人は、あたかもブランド物を持ち歩いていないかのようにして存在しているのだと思った。」

今から700年ほど前の、中世の随筆を題材にした授業でも、現在と過去とを往還する、こんなやりとりが、参加者同士を楽しませ、輝かせます。皆さんのこの一年が、それぞれの分野毎の、こうした発見や驚きに満ちたものとなるように、期待しています。             

                          
             
  徒然草(江戸時代版本・伊東架蔵)

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