白百合について

学長室の窓から No.8

2020年7月21日

もう一度、振り出しに戻って考えましょう


白百合女子大学
  副学長 宮本信也

525日、緊急事態宣言の全国的解除が行われ、その後、いろいろな規制が徐々に緩和されてきました。日常生活が回復していく雰囲気を感じ取った人も少なくなかったことと思います。しかしながら、東京都内においては、6月中旬から感染者数が増加しだし、7月に入ってからは、300人に近い人数の日も含め、100人台の感染者数が報告される日が続くような日々となっています。そして、全国的にも同様の傾向が認められており、都内に限らず、日本全体で感染者数が増加の方向に向かっていることを感じさせる状況となっています。

このような感染状況は、規制緩和により3つの密(3密)を避ける状況が変化したことが一因となっていると推測されています。新型コロナウイルスは、主に飛沫感染と接触感染で感染すると考えられています。密閉、密集、密接の状況は、これらの感染経路に人々が接近する可能性を高め、結果として感染のリスクを高めることになるのです。

ここでおさらいです。密閉とは、基本的には換気ができない空間を意味しています。窓がなく締め切った部屋などです。そうした所では、空気中の飛沫に接触する機会が増加します。密集とは、人が大勢いる場所や状況のことです。ショッピングセンターやコンサートなどになります。そうした場所では、不特定多数の人と密接までではなくても接する頻度が増えることで、感染の可能性が高まることになります。密接とは、比較的近い距離でお互いがある程度向き合う状態で対話や歌唱を相互に行う状況のことです。近い距離で運動をすることも注意が必要とされますが、お互いに対面にならず、会話もせず、触れ合うこともせず、同じ物を共有しなければ、リスクは対面状況よりは低くなるでしょう。密接の基本は、対面での会話・歌唱と考えてよいと思います。向き合っての会話や歌唱は、飛沫をお互いに浴びる可能性が増え、また、相手が触れたところにこちらが触れる可能性も増えることから、感染の危険性が3密の中では最も高くなると思います。

規制が緩和されてきているとはいえ、密閉された場所や密集した場所に行こうと思う人は少ないと思います。一方、友だちや恋人などのようなよく知っている親しい人であれば、2人あるいは数人で落ち合ってどこかに行ったり食事をしたりすることを躊躇する人は少ないのではないでしょうか。でも、よく考えてみますと、そうした状況は、最も感染リスクが高い密接そのものである場合が少なくないように思われます。

ずっとがまんしてきているのですから、たまに友人や家族・親族と連れだって食事をしたり近いところに遊びに行ってもいいじゃないですか、と感じることは当たり前だと思います。気分転換や、明日からまたがんばるためにも、そうした時間は必要ですし、大切です。そのようなとき、ちょっとでもよいので、たった一つのことだけは考えてみるようにされるとよいと思います。それは、向き合っているときの心構えです。

・完全に向き合うのではなくお互いに少し斜めになる向き合い方をする
・可能なら互い違いに座り向き合う状況を避ける
・会話のときはマスクを外さない
・食事のときはお互いに手を前に伸ばして手が触れない距離をとる
・歌は歌わない
もし、対面しなくてもよいのであれば、横並びに座るなどもよいと思いますが、そのとき、会話をするために相手の方を向くのは控えるか、注意するとよいでしょう。

密閉、密集、密接の3密の中では、向き合っての密接に一番注意することを是非心がけていただきたいと思います。


閑話休題
今回の花はコマクサです。日本の高山植物の代表的な花です。花の形が細長く、馬(駒)の顔に似ているのでこの名前が付けられたと言われています。コマクサが見られる山としては、白馬岳(北アルプスの北端にある山です)が有名です。この写真も白馬岳で撮ったものです。ところで、白馬は「はくば」と呼ばれることも多いのですが、「しろうま」と読むのが正解です。山に積もった雪が春に溶け、山肌が現れ、まわりの雪のコントラストで山肌がいろいろな形に見えることがあります(雪形といいます)。その雪形の形が、田んぼの土を耕す代掻きの道具を引かせる馬(代掻き馬)の形に似ているということで、代馬(しろうま)と呼ばれ、やがて、代が白の漢字に換えられ、白馬となったと言われています。



 










                          
             
  

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