学長室の窓から No.29
2021年12月21日
これまでの防止対応を続けましょう
白百合女子大学
副学長 宮本 信也
新型コロナウイルスの第5波が落ち着き、現在、日本は、感染者数が激減した状態が続いています。日本の今の状況は、世界からも不思議に思われているほどですが、感染者数が大幅に減少した要因については、今のところよく分かっていません。
ワクチン接種が進んだことが要因の一つであることは間違いないと思いますが、日本と同等のワクチン接種率の国でも感染者数が増えているところはあります。日本人はマスクをきちんと付けている人がほとんどですが、同じようにマスク着用が広く行われている国でも感染者数の増加がみられます。国立感染症研究所は、ウイルス自滅の可能性も報告しています。ウイルスの増殖に必要な酵素(化学反応を促進する物質です)に異常が認められるウイルスが、最近、多く見られていることを根拠にしています。もちろん、あくまでも仮説ですし、そのような変化が日本だけで生じている理由の説明が難しいところです。東京農工大学感染症未来疫学センター長の水谷教授は、第5波が落ち着いた今の状況について、ワクチン接種だけでは説明できず、感染しやすい人の多くが感染してしまったことも関係している可能性を指摘しています。言い換えますと、感染しやすい人がほとんど感染し、あとは、ワクチン接種を受けた人やもともと感染しにくい人が残ることで落ち着いたのではないか、ワクチン接種開始前の第4波までの収束はこの考え方で説明でき、第5波も同様に考えられるのではないかという考え方になります。
おそらく、どの仮説が一番適切かということではなく、考えられている仮説が該当する地域もあればそうでない地域もあり、それらの総合で今の感染状況となっていると考えられるかもしれません。個人的感想ですが、日本は、世界の中でもワクチン以外の感染防止対応が、もっとも厳密にかつ広く国中で実施され続けている国のように感じています。単に、そうした対策を実施したというのではなく、ほとんどの国民が、ある意味自主的に防止対策を今も続けていること、この状況も、もしかしたら、今の落ち着いた状況に影響しているのかもしれないとするのは考えすぎでしょうか。
コロナウイルスは、感染したあとのウイルス自身の遺伝子がコピーされるときにコピーミスが起こっても、そのミスを修復する機能がほとんどないため、異なる特徴を持つウイルス、つまりは、変異株が生じやすいといわれています。デルタ株は落ち着きましたが、今、オミクロン株の流行が始まりつつあります。日本の第5波は劇的に落ち着きましたが、第6波が来ることを防ぐことは難しいようには思われます。
私たちは、コロナ慣れすることなく、これまでと同様の感染防止対応を続けて行くことが大切なように考えるものです。
閑話
これは、ハッポウウスユキソウ(八方薄雪草)といいます。真ん中に茶色く見えるのが花で、まわりで白っぽく花のように見えるのは葉です。花は、本来は黄色なのですが、この写真を撮影したのは9月で、時期がもう遅く、花はほぼ枯れている状態でした。ハッポウウスユキソウは、ミネウスユキソウの変種で、後立山連峰にある八方尾根の固有の花です。発見されたのは、1997年と比較的最近です。白っぽい葉が、薄く雪が積もったようにも見えるので、薄雪草と名付けられたと思われます。薄雪草、漢字にすると、何となく日本的情緒を感じますよね。