日本近代文学、特に明治・大正期の文学(島崎藤村を中心に)、明治期以降、海外の政治、思想、社会状況、文学、宗教などが日本の近代文学に及ぼした影響に注目し、研究しています。
日本近代文学とは、どの時代の文学を指すのかといいますと、明治時代以降のものになります。つまり明治、大正、昭和、平成、そして令和の時代に活躍した(している)文学者達によって創作された作品です。作品は、それぞれ固有の世界を形づくっていますが、それらは作者である文学者の問題意識や文章表現に対する姿勢によって、自由に構成、表現されています。明治期は日本の国家の在り方が、それ以前とは大きく変容した時期で、当時の日本人の日常生活や精神性に大きな変革をもたらしました。この流れは、時代が大正期以降になっても、状況や様態は違っても続いてきましたし、そのことは日本が国際社会のなかに存在していること、そして私達はそのなかで生きる存在であることを強く意識することにつながります。
日本は海外諸国と多様な関わりをもち、人的交流を通して国際感覚を磨いてきました。多くの他者に出会ってきたわけです。その際に、自分自身とは異なる点を発見することがあります。文学作品との出会いも同じです。登場人物は皆が皆、共感を覚えることができるような人物とは限りません。作中でおこる出来事も現実味がないということもあるでしょう。そこに時代や年齢など、自分との間にある種の距離を感じるかもしれません。けれども、その表面だけを見るのではなく、隠れた奥深いところに潜むもの、それを見つめることが大切です。例えば令和の今から考えると、明治時代は大昔のように思うかもしれませんが、その時代を生きた祖先達がいて、彼らの経験があって、私達が生きる今があります。一見自分とは違うと感じる他者の発見は、自分自身の物差しだけで物事を捉えるのではなく、あらためて普遍的な問題を確認し、あるいはまた自分自身の価値観を再考する機会であり、広い視野と深い洞察力を育むことへ繋がります。文学作品を読み、考えることは、そうしたことを可能にする奥深い世界にふれることなのです。