[国語国文学科]【報告】「国語国文学特講(演劇)Ⅱ」の授業でゲストスピーカーをお招きしました

2025.03.25
教育・研究
安冨順先生ご担当の「国語国文学特講(演劇)Ⅱ」の授業において、演出家の冨士川正美先生(桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻・常勤講師)をゲストスピーカーにお招きしました。
 
登場人物の台詞や、ト書と呼ばれる、所作などを示したごく短い文を中心に構成された、いわゆる演劇台本のような文学作品のことを戯曲と言います。(ト書は、もとは歌舞伎の台本から来た言葉です。)
講演会では木下順二の『夕鶴』が取り上げられました。昔話の鶴の恩返しをもとに書かれた作品だと言われています。初出と初演情報、上演スタイルや上演当時の時代背景を確認した後、学生たちは、冨士川先生から役を振られ、実際に声に出して読み進めていきました。
戯曲を読む時にはまず、場面で段落分けをするそうです。第何番の場面なのか、便宜上の場面割りをすることは、お稽古への段取りという側面もあって重要であり、場面割りをしながら演出家は台詞やト書から、今、何が起きているのか、どんな状況なのか、誰が何をしたのかをはっきりさせます。その際、何が目的で、もしくは何がきっかけでそうするのか、といった直接は書かれていない部分の意味を読み取ることが〈戯曲を読む〉上では最も大事なのだとわかりました。例えば作品冒頭、「与ひょう」がいろりの傍で眠りこけていることが書かれていますが、これは決して「与ひょう」が怠け者であるからではなく、「つう」の帰りを待っていたからだと読み取ることで、「与ひょう」は「つう」なしに生きてはいけないのではないかという作品結末の伏線、暗示であったことが読み解けていくのです。(近世戯曲だとこのような伏線をしこみと言い、しこみが明らかになって終わりに向かうことをほどきと言うそうです。)
ロマンティックに作品を読み込んでいき、最後には争いや平和、理想と現実について、強いメッセージを学生たちは受け取っていました。
ところで、講演会は、冨士川先生の演劇との出会いを伺うところから始まりました。学祭で舞台をなさったのがきっかけだそうで、会場が暗くなり、舞台照明に切り替わって、空間が変わる瞬間、非日常になる瞬間にやみつきになったという先生のお言葉に大きく頷き、共感を示す学生もいました。そのまま学生たちの氏名や出身、ゼミなどでの研究分野や関心を一人一人聞き取りながら、コミュニケーションをとっていく先生に導かれるように、自然と戯曲を読む空気が整えられていきました。
〈戯曲を読む〉こと、そしてこの空気の整えられ方は、「演出家はその作品全部のプロダクトをとらなければならない」と先生がおっしゃっていたことと繋がりがあったのではないでしょうか。「こういう作品をやりたいので出てくれませんか」と演出家は人を集める必要があることや、各地を回って旅公演をなさっている先生のご経験、『夕鶴』という作品が架空ということですが誰もがどこか懐かしく思える方言が用いられていることが、示唆されていたようにも思います。演出とは何か、演出家の仕事とは具体的にどのようなものか、演出家と役者との関係について多角的に学びとる貴重な時間を過ごせました。
 
【国語国文学科公式Instagram  @shirayuri_kokubun】 
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