学びの内容

エビネ リュウスケ

海老根 龍介 教授(大学院 フランス語フランス文学専攻主任)

専門分野

19世紀フランス文学、特にボードレール。19世紀という時代を特徴づける「進歩主義」の考え方が、芸術のあり方にどのような影響を及ぼしたのか、また作家たちは作品を通して科学や産業の進歩を称える当時の社会に対して、どのような批評的距離をとろうとしたのかという問題を、詩人ボードレールを例にとって考えた博士論文が私の研究の出発点です。今後は他のさまざまな作家にも関心を広げ、19世紀という時代と文学・芸術の間にある関係のさまざまな面について、より掘り下げて勉強していければと思っています。

自己紹介・学生へのメッセージ

■自己紹介
東京日野市生まれ。5歳のときに多摩ニュータウンの団地に引越し、中学生時代のごく短い海外生活を除けば、25歳で本格的に留学するまでずっとそこで暮らしました。留学には、少し勉強をしてその後のための資料を集め、見聞も広げられればといささか軽い気持ちで出かけたものの、いざ研究テーマを絞り込み調査を開始すると、きちんとした成果をあげて帰国したいと強く思うようになり、生来の要領の悪さも手伝って、博士論文を書き上げるまで、結局8年もの長きに渡ってフランスのパリで生活することになりました。帰国後はいくつかの大学で非常勤講師をしていましたが、2006年度から専任教員として白百合の教壇に立っています。恵まれた環境で学生のみなさんと一緒に勉強ができることを大変うれしく思います。

担当科目

■文学部 フランス語フランス文学科
フランス語総合IA
フランス語総合IB
フランス語総合ⅡA
フランス語総合ⅢA
専門ゼミ

■大学院 フランス語フランス文学専攻
フランス文学研究G・H

担当科目の内容

■文学部 フランス語フランス文学科

◇専門ゼミ◇

「リライト(書き換え)」や「ジャンル」という要素に焦点を当てながら、芸術作品の分析方法を身につけることを目指します。ある作品が書き換えられるとはどういうことなのか、ジャンルをまたいだ書き換えであった場合(「アダプテーション」といいます)、そこで何が変わり変わらないのかを、学生による発表と意見交換を中心にしながらさまざまな角度から検討します。一人ひとり別々のテーマを扱うため、やや抽象的な言い方になりますが、自分の設定したテーマについて、資料の探索とその論理的な検討を行い、友人たちとの議論も踏まえて、適切な結論を導き出せるようになることが最終的な目標です。前期は、絵画、小説、舞台、漫画、映画、アニメーションなど、物語を語るさまざまなジャンルそれぞれの特性を、参加者による発表、またそれをめぐる意見交換をとおして明らかにしていきます。後期は、前期で学んだジャンルの特性を踏まえながら、リライトまたはアダプテーションというより広いテーマで、2つ以上の作品に関連する発表が全員に課されます。指定されているテーマが広い分、テーマ設定から自分で行う必要があります。少し骨のある論文を参照したりもしますので、受け身ではなく積極的な参加が求められます。当然、前後期ともレポートの提出は必須です。

  

■大学院 フランス語フランス文学専攻

◇フランス文学研究G・H◇

19世紀の代表的な詩作品をフランス語原文で読解します。初級・中級文法の復習を行いながら、詩作品に特有の文体にも対応できるよう語学的な訓練を施す一方、フランス詩法の基礎と、19世紀フランス詩史の概略を、「フランス文学研究G」(前期)では「ロマン主義」を、「フランス文学研究H」(後期)では「象徴主義」をキーワードに概観していきます。最初の3回ほどで音節の数え方や韻の種類、詩に特有の修辞など、フランス詩法に関する基本的な知識を身につけたうえで、その後の授業で各詩人の文学史的な位置づけに注意を払い、初級・中級文法の要素を確認しながら、各詩篇を丁寧に日本語に訳していきますが、その際、詩においてはとりわけ問題となる、「日本語にならない要素」を逆照射することで、フランス語に固有の詩的表現について理解を深めることを目指します。扱う詩人は、ラマルチーヌ、ヴィニー、ユゴー、ミュッセ、ネルヴァル、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、マラルメなどを予定しています。各学期末には、受講者なりの見解をレポートにまとめ、相互に批評を行うことで、文学作品を対象にしたレポートや論文をどう書けばいいのかも学びます。

業績

■著書
・Baudelaire et les formes poétiques、共著、Presses universitaires de Rennes、2008(« Baudelaire et l’école réaliste : la liberté créatrice et son danger »)
・『人間と動物をめぐるメタファー』、共著、2008(「泥濘の中の白鳥、『進歩』の時代の英雄と詩人」)
・『白百合で学ぶフランス文学』、共編著(福田耕介との共編)、弘学社、2011(「はじめに」、「プレヴェールの『朝の食事』とアポリネールの『ミラボー橋』」)
・『語学・文学研究の現在2』、共著、弘学社、2012(「『美』の追求の意味するもの - 1850年代のボードレール」)
・『異文化の中の日本文学』、共編著(福田耕介との共編)、弘学社、2013(「安東次男と異言語の文脈」)
・『文学と悪』、共著、弘学社、2015(「シャルル・ボードレールと悪の問題」)
・『芸術におけるリライト』、共編著(辻川慶子との共編)、弘学社、2016(「はじめに」)
・『長編小説の扉』、共著、弘学社、2018(「エニール・ゾラ『ジェルミナール』と全体性)
・  ヴィリエ・ド・リラダン(高野優訳)『未来のイヴ』、光文社古典新訳文庫、2018(「解説」、「年譜」)
・『引用の文学史』、共編著(篠田勝英、辻川慶子との共編)、水声社、2019(「序文」、「リライトと寓意の多層性 — ボードレール「お菓子」再読)
・『2019年度版 仏検公式ガイドブック 傾向と対策+実施問題 準2級』、共著、公益財団法人 フランス語教育振興協会[発売:駿河台出版者]、2019

■主な論文

・「進歩と旅 — マクシム・デュ・カンとボードレール」(『仏語仏文学研究』第17号、1998)
・「写真・レアリスム・想像力ー後期ボードレール美学の一断面」(『仏語仏文学研究』第23号、2001)
・「革命と悪ーボードレールの1848年」(『仏語仏文学研究』第32号、2006)
・「美学の倫理化か、倫理の美学化かーボードレールの『モデルニテ』再考」(『白百合女子大学研究紀要』第42号、2006)
・「『編集長精神』の時代の文学ーボードレールとジャーナリズム」(『フランス近代詩とジャーナリズム』、科学研究費補助金報告書、2007)
・「頽廃と自由ー阿部良雄をめぐって」(『水声通信』6月号、水声社、2007)
・「挑発とカムフラージューボードレールの『反レアリスム』」(『文学』11-12月号、岩波書店、2007)
・«Baudelaire et le progrès industriel : un débat littéraire dans les années 1850»(L'Année Baudelaire,nº 13-14, Paris, Honoré Champion, 2011.)
・「産業的進歩の時代の文学—第2期『パリ評論』研究のための予備的覚書」(『白百合女子大学研究紀要』第47号、2011)
・「優しく暖かな悲しみの世界—キティ・クローザーの絵本をめぐって」(Lilia candida 第43号、2013)
・「拡散する悪 - 『パリ劇壇艶事秘話』と1840年代のボードレール」(『白百合女子大学研究紀要』第50号、2015)
・「子供・感受性・秩序—後期ボードレールの美学と存在論」(『仏語仏文学研究』第49号(塩川徹也先生古稀記念特集号)2016)
・« Tsuguo Andô et la littérature française » ( AmeriQuests, vol. 13 nº1, 2017 ) 
・「外国語教育における『高大連携』の可能性 -『高校生のためのフランス語サマースクール』カリキュラム開発と実施」(大塚陽子、小川実優、中井珠子、善本孝との共著論文、『白百合女子大学研究紀要』第54号、2018)

経歴
東京大学大学院博士課程単位取得満期退学、パリ第四大学博士課程修了。博士(フランス文学)。白百合女子大学非常勤講師、一橋大学非常勤講師、白百合女子大学専任講師、同准教授を経て、2016年より現職。
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