学びの内容

ムラナカ ユミコ

村中 由美子 准教授

専門分野

20世紀フランス文学、とりわけマルグリット・ユルスナールの作品を研究しています。この作家の代表作は古代ローマの皇帝が語る虚構の自伝として書かれた『ハドリアヌス帝の回想』(1951)で、シュルレアリスムやヌーヴォー・ロマンといった前衛的な文学が注目されがちな時代において、古典古代の深い学識に裏付けられた独自の重厚な文学世界を構築したというのがこの作家についての定説です。その一方で、作家たちはもとより芸術家、知識人のあいだで戦間期に一大ブームとなったギリシア旅行に熱狂するなど、ユルスナールは同時代人の動向に対して無関心というわけではありませんでした。 « L’esprit du temps »、すなわち時代精神からこの作家が常に一定の距離を保ちつつも、それを無視することはせずに作品を紡いでいった過程を、同時代の文学・芸術潮流も参照しつつ明らかにしたいと考えています。

自己紹介・学生へのメッセージ

高知県生まれ。ユルスナールの蔵書研究のため、学生時代にはアメリカメイン州マウント・デザート島の作家の家を訪れることができました。学生のみなさんにも、遠くの世界、広い世界に自分を導いてくれるような対象との出会いがあることを願っています。
担当科目
■【学部】フランス語フランス文学科
フランス語総合IA、IB
2年次アトリエID:フランス語スピーチ入門
専門ゼミ
 
■【大学院文学研究科】フランス語・フランス文学専攻
ヨーロッパ文化史研究E
担当科目の内容
■フランス語フランス文学科
◇ 専門ゼミ:文学作品の映画化◇
 原作とその映画版を比較して、それぞれの面白さについて考察します。2023年度前期は、シャンタル・トマ『王妃に別れをつげて』(原作)とその映画版、ブノワ・ジャコ監督『マリー・アントワネットに別れをつげて』を取り上げ、フランス革命についても学びながら原作を読み解き、映画を鑑賞しています。架空の人物である、マリー・アントワネットの朗読係から見たフランス革命の3日間が描かれた、興味深い小説。今をときめくレア・セドゥーが朗読係を演じ、実際のヴェルサイユ宮殿で撮影された映画は絢爛豪華そのもの。映画のなかのセリフを通して、生きたフランス語の表現を学ぶこともできます。
 
◇ 2年次アトリエID:フランス語スピーチ入門◇
 さまざまなトピックについて、フランス語でスピーチするための語彙、表現を学びます。クラス全員の前でスピーチを発表する機会を隔週で設けているので、学んだ内容をすぐに実践することができます。
 
■【大学院文学研究科】フランス語・フランス文学専攻
◇ ヨーロッパ文化史研究E◇
 フランスの大学生向けの、映画分析のための教科書を輪読しながら、映画の歴史や分析方法について学びます。また、日本で一般公開されていないフランス映画を取り上げ、字幕をつけるプロジェクトも行っています。
業績
◇ 研究論文
« L’Œuvre au Noir de Yourcenar et la peinture — autour de la genèse textuelle et de l’école flamande — », (「ユルスナールの『黒の過程』と絵画 — テクストの生成とフランドル派をめぐって」)、『日本フランス語フランス文学会関東支部論集』、日本フランス語フランス文学会関東支部、第20号、2011 年、pp. 101-114.

« Motif du miroir et représentation de soi à travers L’Œuvre au Noir et Le Labyrinthe du monde de Marguerite Yourcenar »(「鏡のモチーフと自己表象 — マルグリット・ユルスナールの『黒の過程』と『世界の迷路』をめぐって」)、『フランス語フランス文学研究』、日本フランス語フランス文学会、第102号、2013 年、pp. 105-120.

« Marguerite Yourcenar, lectrice d’Oscar Wilde — L’exemplaire du De Profundis conservé dans la ‘‘Petite Plaisance’’ — »,(「オスカー・ワイルドの読者、マルグリット・ユルスナール —《プティット・プレザンス》に保存された『獄中記』—」)、『フランス語フランス文学研究』、日本フランス語フランス文学会、第105 号、2014 年、pp. 165-180.

« Le démon de l’intemporalité ou la stratégie de Marguerite Yourcenar envers la notion de contemporain »,(「非時間性という問題、あるいは同時代という概念に対するマルグリット・ユルスナールの戦略」)、L’Année Mosaïque : Revue de jeunes chercheurs en sciences humaines(人文系若手研究者による雑誌『モザイク年報』)、EME 出版(ベルギー・Fernelmont)、n° 3、2014 年、pp. 29-40.

« Marguerite Yourcenar et Charles Du Bos. Étude de leur correspondance aux États-Unis et de son implication sur l’écriture des Nouvelles orientales (1938) », (「マルグリット・ユルスナールとシャルル・デュ・ボス — 二人の作家がアメリカで交わした書簡が『東方綺譚』[1938] にもたらしたもの」)、『仏語仏文学研究』、東京大学フランス語フランス文学研究室、第47 号、2015 年、pp. 45-59.

« Un témoignage inédit de la découverte de l’Antiquité par Marguerite Yourcenar. L’ « Album de vers anciens » et le recueil de ses poèmes de jeunesse », (「マルグリット・ユルスナールによる古代の発見を示す未刊の作品 —『古代詩篇』と若き日の詩集」)、『仏語仏文学研究』、東京大学フランス語フランス文学研究室、第48 号、pp. 49-73、2016 年.

« L’Écriture baroque de Marguerite Yourcenar — Une analyse du thème de l’inversion dans Feux (1936) », (「マルグリット・ユルスナールのバロック的エクリチュール — 『火』[1936]における倒錯のテーマの分析」)、『仏語仏文学研究』、東京大学フランス語フランス文学研究室、第50号、2018年、pp. 133-150.

「ペルソナとしてのギリシア神話— 二人の女性作家、マルグリット・ユルスナールとクロード・カーアンが「私」を語るとき」、篠田勝英・海老根龍介・辻川慶子(編)『引用の文学史—フランス中世から二〇世紀文学におけるリライトの歴史』水声社、2019年、pp. 284-301 ほか.
経歴
日本学術振興会特別研究員(PD、2016)、白百合女子大学非常勤講師(2016-2017)、東京外国語大学非常勤講師(2016-2019)、国際日本文化研究センター共同研究員(2017-)津田塾大学非常勤講師(2017-)、首都大学東京人文・社会系(現、東京都立大学人文学部)フランス語圏文化論教室助教(2017)を経て、2018年より白百合女子大学専任講師、2021年より現職。
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