私は、発達障害と呼ばれる、生まれつき世界の見え方や捉え方が多数派と異なっていたり、定型発達と比べた時に能力の凸凹があったりする方々の臨床及び研究に携わってきました。一人一人が持つ生来の気質や特性それ自体が障害ではなく、周囲の環境や他者(特に多数派の人々)との相互作用の中で、困ること(障害)が生まれてくるのだと考えています。臨床も研究も、どうしても、少数派である発達の特性を持つ方々に焦点が当てられて、発達の特性がある方々やその保護者の方々が努力をする形になりがちですが、多数派と少数派の人々がどのように共生できるのかという視点で研究を進めていきたいと願っています。
介入の技法としては認知行動療法を中心にしており、児童思春期の強迫性障害及びトゥレット症候群という慢性チック障害に対する認知行動療法の臨床と研究を専門としています。その中でも、トゥレット症候群を持つ方々が行うチック症状への自己対処の研究と、その研究成果を認知行動療法に組み入れていくことに現在取り組んでいます。トゥレット症候群を持つ方々は、普段の生活の中で色々な創意工夫をされながら、困りごとや症状と付き合っている方が多くいらっしゃいます。そのようなご経験、知恵や工夫を集約させていただくと共に、私の方でも臨床心理学、特に認知行動療法の知識などを持ち寄らせていただいて、より良い支援につなげていけたらと願っています。