平安時代後期から室町時代までの中世文学、中でも説話文学や『方丈記』『徒然草』などの散文を中心に学んでいます。
変革期の生き方、感じ方
中世の出発点、平安時代後期から鎌倉時代前半にかけての時代は、別名「院政期」と呼ばれ、日本の社会全体の価値観が大きく変わったことで知られています。この時代の文学ジャンルで最も活況を呈したのは説話文学であったと考えられ、『今昔物語集』『宝物集』『発心集』『古事談』『宇治拾遺物語』『十訓抄』『古今著聞集』『沙石集』などの名作が陸続と作られました。
中世のもう一つの転換点、鎌倉時代末から室町時代前期にかけての時期は「南北朝期」と呼ばれ、『徒然草』『太平記』『増鏡』など文学史を語る時に欠くことの出来ない作品が輩出しました。
これらの時期は、それぞれ前の時代の発想を継承しながらも、それから自由になり、打破していく変革期にあたります。作品世界からは、当時の人々が時代のうねりの中を、しなやかに、しかし芯のある生き方をしていた様子がうかがわれます。
現代という変革期を生きる我々にとって、彼等の価値観はどう問い返されねばならないか、考えていきたいと思います。
人文科学としての国文学研究
文学作品に加え、歴史史料、絵巻物など、様々なジャンルの資料を参照しながら、当時の人々の知識や発想を体得しようとするのが、わたくしの作品や時代へのアプローチの基本姿勢です。
しかし、残されたデータの制約から、推測できるものとできないものがあります。どれだけの材料から何が推定できるのか、何は分かり、何は分からないのか、そうした論理と意味の測定を行っていくのが、人文科学の一分野としての国文学研究のあり方だろうと思います。
授業を通して、こうした測定を試みる技術を身につけ、併せて、時代や作品の高さや深さを感じ取る感性を養っていきたいと考えています。