[発達心理学科]2023年度「精神疾患とその治療」授業風景

2023.04.19
教育・研究
 『精神疾患とその治療』は3・4年生を対象とした公認心理師カリキュラムの必修科目です。担当は精神科医で精神医学に造詣が深い、木部則雄教授です。
 
 本授業では、心理専門職として臨床現場に臨む際に、必要な精神疾患の概要を、15回の授業で学びます。授業内容は、精神疾患の概論、統合失調症、双極性感情障害、うつ病、パニック障害、強迫性障害、依存症、摂食障害、パーソナリティ障害、発達障害、薬物療法、心理療法等です。

 今回は、第2回「精神疾患の概論②」の授業風景をご紹介します。まず、「精神医学」は診断が難しいという話から始まりました。糖尿病、高血圧等は、明確な診断基準がありますが、精神の病気の診断はそのようにはいきません。その診断の困難さは、精神病患者に対する偏見とも関わることでした。そうした偏見を解消するために18世紀後半から19世紀前半に取り組まれた精神病者の解放運動によって、精神治療学としての精神医学が生まれることになりました。中でも18世紀のフランスのピネルの改革は有名です。その当時、精神病は狂気とみなされて、精神病者は、閉鎖された病棟で鉄の鎖につながれていました。ピネルは当時勤務していた病院で、患者の鉄鎖を解き放つことで閉鎖病棟を改善し、同病院のホスピスを解放病棟にするのに力を尽くしました。このような、患者を一人の人間として尊重して関わる姿勢、つまり心の専門家の原点が紹介されていました。公認心理師の仕事とは、そのように病者を人間として尊重し、健康的な部分と関わることであることにも触れられておりました。

 精神医学の発展によって現在では、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)や、精神障害の診断と統計の手引き(DSM)により、精神疾患の診断基準が明確になり、今まで医師の主観的な傾向にあった精神障害の判断に対して、客観的な判断を下せるようになりました。その一方、精神疾患が発症した原因(パーソナリティ、成育歴、環境等)に目を向けることが以前より少なくなっていることの指摘も授業の中でありました。


 本授業の受講生は、皆大変熱心に、集中して授業を聞いていました。本科目は、公認心理師カリキュラムの必修科目なので、公認心理師を目指して勉強している人が多く参加しております。本講義は、公認心理師になるための基礎的な知識を習得できることのみならず、精神医学の奥深さに触れることができる貴重な授業といえるでしょう。
太田 百合子
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